ちょっと勧めてみたい本;一覧

≪概説書≫

『漫画版 日本の歴史』(全10巻)集英社文庫,2007
 漫画とバカにしてはならない。これから受験勉強を始めたいけれども,基礎知識が不安だし,教科書を読むのはおっくうだ,という人にはお勧めしたい。
網野善彦『日本社会の歴史(上中下)』岩波新書、1997
 近代史の記述が少なすぎるという短所をもっているものの、一人の人物が通史を書き切っているという点だけを考えても、読んでおいてよい1冊です。
佐々木潤之介ほか編『概論 日本歴史』吉川弘文館,2000
 一般的な概説書。受験生にはややしんどいかもしれないが,読めるのなら読んでみたい。
荒木俊夫・保坂智・加藤哲郎『日本史のエッセンス 歴史が物語るもの』有斐閣,1997
 視点に工夫をこらした概説書。教科書のような概説に物足りなさを感じる人にお薦め。
末木文美士『日本仏教史 思想史としてのアプローチ』新潮文庫,1996
 仏教について通史的に書かれた概説書。受験とは無縁な話もそれなりに出てくるが,文庫版で手に入ることもあり,読みやすいので紹介しておきます。
原田信男『コメを選んだ日本の歴史』文春新書,2006
 米を軸にして日本史を俯瞰してみる。
松本一夫『日本史へのいざない 考えながら学ぼう』(岩田書院,2006)
 22のテーマが立てられ,いろいろな問いが付けられている。問いといっても,一問一答タイプではなく,いろいろと頭を使わせてくれます。教員の授業ネタ集として,そして高校生・受験生の学習素材としても,お薦めです。

 

≪原始≫

 

≪古代≫

吉田孝『日本の誕生』岩波新書,1997
 タイトルを見ると,著者を知らない人には「日本列島の誕生」について書かれた書物と勘違いしそうだが,弥生〜平安前期を俯瞰した概説書。「日本」を「王朝名」と把握し,7世紀末における「日本」号の成立,平安前期における「古典的国制」の成立を論じている。
吉田一彦『民衆の古代史 『日本霊異記』に見るもう一つの古代』風媒社,2006
 七世紀後半に整った律令制度は,どこまで古代社会を規定していたのか,どの程度まで社会に浸透していたのか。『日本霊異記』を素材としながら,律令の規定からだけでは見えない社会のあり様を紹介している。学術論文ではないので,読みやすい。
神野志隆光『古事記と日本書紀 「天皇神話」の歴史』(講談社現代新書,1999)
 「神話」と聞けば,古事記や日本書紀に記載された神話を思い浮かべる人は多いだろう。しかし,両者に記載された神話に違いがあることを意識している人は少ないはず。中世や近代における変容をもふまえながら,古事記と日本書紀の神話の違いを論じている。
石井正敏『日本史リブレット14 東アジア世界と古代の日本』山川出版社,2003
 古代律令国家は,どのような国際認識のもとで周辺諸国に対したのか。
李成市『世界史リブレット7 東アジア文化圏の形成』山川出版社,2000
 東アジア世界という視点からも,古代日本をながめてみてほしい。
佐々木恵介『日本史リブレット12 受領と地方社会』山川出版社,2004
 10世紀に登場する受領とはどのような存在であったかを,簡明に描いてくれています。
熊谷公男『日本史リブレット11 蝦夷の地と古代国家』山川出版社,2004
 大学入試を考えれば細かいが,古代における蝦夷がどのような存在であったのか,古代国家がどのような関係をもとうとしたのかなど,古代東北地方のあり様を具体的に知ることができる。
元木泰雄『源満仲・頼光』ミネルヴァ書房,2004
 武士と貴族を相対立するものと考えている人,武士も貴族だったと言われて,えっ!と驚く人は,今でも案外多いと思う。そういう人にこそ読んで欲しい本です。同じ元木氏の『武士の成立』(吉川弘文館,1994)より,学術的な議論がなく,読みやすい。

 

≪中世≫

五味文彦『日本史リブレット33 中世社会と現代』山川出版社,2004
 中世を概観してくれる格好の入門書です。
黒田俊雄『寺社勢力 −もう一つの中世社会−』岩波新書、1982
 鎌倉・室町時代においても延暦寺・興福寺などの大寺社が宗教的にも世俗的にも大きな勢力を持っていたことは、今でも余り意識されていない。そうした意識の希薄な人にこそ読んで欲しい、難解ですけど(苦笑)。
 なお、松岡正剛の千夜千冊では黒田俊雄『王法と仏法』が取り上げられています。こちら
平雅行『親鸞とその時代』法蔵館、2001
 収録されている「専修念仏とその時代」が鎌倉時代の仏教を概観したもので、講演調の文体で書かれているので読みやすい。実教出版の『日本史B』[新課程版]で、親鸞の悪人正機説についての説明が大きく変化したが、それについては「親鸞の善人悪人観」が参考になる。
五味文彦『藤原定家の時代 −中世文化の空間−』岩波新書、1991
 藤原定家『明月記』を手がかりとしつつ、平安末期から鎌倉初期にかけての政治・文化のありさまを描く。ちなみに、これは絶版のようですが、アマゾンあたりで探せば入手できます。
川合康『源平合戦の虚像を剥ぐ −治承・寿永内乱史研究−』講談社選書メチエ、1996
 いろいろと面白い話が盛り込まれているのだが、個人的には、「源頼朝=源氏の嫡流」という発想が<神話>であったこと、その<神話>が形作られていく過程についての議論が面白かったし、また地頭(荘郷地頭)についての説明は非常にインパクトがあった。なお、川合氏の個人サイトはこちら→日本中世史を歩く
服部英雄『日本史リブレット24 武士と荘園支配』山川出版社,2004
 鎌倉武士の所領支配のありようをさまざまな観点から分析し,武装した総合商社と把握する。武士といえば一所懸命,そういう観念からいい加減,解き放たれたいものです。
村井章介『中世日本の内と外』筑摩書房、1999
 平安中期から戦国時代を対象に、内/外の関係のあり方に焦点をあてて、その歴史的な推移を概説している。もともと東大教養学部での講義ノートをベースにしたものとのことで、非常に読みやすい。
新田一郎『日本史リブレット19 中世に国家はあったか』山川出版社、2004
 「中世」というものをどう把握するのかをめぐって考察が進められている。やや「こむづかしい」(筆者みずからの表現)が、刺激的です。ただ受験生にとっては読まない方がいいかもしれない......

 

≪近世≫

山口啓二『鎖国と開国』岩波現代文庫,2006(原著は1993)
 大学での講義録にもとづいたもので,江戸時代全体を俯瞰するのに最適です。
山本博文『参勤交代』講談社現代新書、1998
 参勤交代とはどういうものだったのか。その実態を紹介してくれる。
高埜利彦『日本史リブレット36 江戸幕府と朝廷』山川出版社、2001
 江戸時代の朝幕関係を簡潔に説明してあり、初期から後期にかけての変遷がわかりやすい。
藤田覚『日本史リブレット48 近世の三大改革』山川出版社,2002
 享保改革と寛政・天保改革の違いを考えたことがあるか?東大受験生なら読んでおきたい1冊。
岸本美緒『世界史リブレット13 東アジアの「近世」』山川出版社,1998
 中世から近世への転換を東アジアという次元で考えてみたい。
紙屋敦之『日本史リブレット43 琉球と日本・中国』山川出版社、2003
 島津氏による征服を受けながら、なぜ琉球は王国として存続できたのか。
九州国立博物館編『きゅーはくの絵本2 南蛮屏風  じろじろ ぞろぞろ』フレーベル館,2005
 「南蛮屏風」の内容を紹介したもの。軽く楽しめます。
赤瀬川源平『千利休 無言の前衛』岩波新書、1990
 自虐的なほどの自己抑制。そのアグレッシブさ。これも日本の伝統。
大藤修『日本史リブレット39 近世村人のライフサイクル』山川出版社、2003
 江戸時代の百姓がどのような生活をおくっていたのか、出生から死にいたるまでのライフサイクルを概説している。
森銑三『新編おらんだ正月』岩波文庫、2003
 江戸時代の蘭学者を中心に実学者など52人を、エピソードをまじえながら平易な文章で紹介している。対象は学者だけにとどまらず、角倉了以や河村瑞賢、田中丘隅、近藤重蔵、間宮林蔵にまで及び、江戸時代の文化・社会状況を知ることのできる名著。
藤沢靖介『部落の歴史像 −東日本から起源と社会的性格を探る』解放出版社,2001
 新課程の山川『詳説日本史』では,江戸時代の「えた」について,「かわた」や「長吏」との表現が併記されるようになっている。いったい,どのような関連があるのか,彼らはどのような暮らしをしていたのか。こうした疑問に応えてくれる概説書です。
杉浦日向子『百日紅(さるすべり)』ちくま文庫,1996
 先ごろ亡くなった杉浦日向子氏への哀悼の意味をこめて紹介しておきます。『合葬』や『百物語』もいいんですが,個人的には,葛飾北斎を描いた『百日紅』が一番好みです。[2005.7.29]

 

≪近現代≫

荒木信義『円でたどる経済史』丸善ライブラリー、1991
 貨幣と金融を中心にしながら明治から1980年代までの経済史を概説してある。産業の動向については触れられていないが,経済動向を俯瞰するのには便利。新書サイズ。
倉都康行『金融史がわかれば世界がわかる −「金融力」とは何か』(ちくま新書,2005)
 近現代における国際金融のあり様とその変化を概説している。
由井正臣『日本の歴史【8】 大日本帝国の時代』岩波ジュニア新書,2000
 近代の概説書。できる限り平易に書かれているので,この夏に何か一般書(新書)を読みたいと思う人にはよいだろう。
三和良一『概説日本経済史 近現代』東京大学出版会、1993
 もともとは放送大学の教材だったものをベースとしたもので,幕末〜高度経済成長期の産業・貿易・金融の動向をまんべんなく扱っている。受験生にはややしんどいと思う。
茂木敏夫『世界史リブレット41 変容する近代東アジアの国際秩序』山川出版社,1997
 東アジアの伝統的な国際秩序(中華秩序)がどのように解体し,そして再編されようとしたのか。<近代>への変容を東アジアという次元で考えてみたい。
鹿野政直『近代日本思想案内』岩波文庫(別冊14),1999
 近代日本の思想を人物とその著作を紹介しながら概説してある。
読売新聞20世紀取材班編『20世紀 大日本帝国』中公文庫
 日露戦争,金融恐慌〜昭和恐慌,満州事変〜日中戦争の3つのテーマについて,ドキュメンタリー風にまとめたもの。もともと読売新聞の連載記事だったものを,時代・テーマごとに再編集したもので,比較的読みやすい。
大門正克『シリーズ日本近代史11 明治・大正の農村』岩波ブックレット,1992
 産業革命や大戦景気,徴兵制や教育の浸透などによって農村がどのように変化したのかがコンパクトにまとまっています。
NHK取材班編『日本の選択6 金融小国日本の悲劇』角川文庫,1995
 関東大震災から金解禁にかけての経済情勢に焦点をあてたドキュメンタリー。絶版ですが,アマゾンではユーズド商品として売りに出ているようです(2005.7.29現在)。
倉沢愛子『「大東亜」戦争を知っていますか』講談社現代新書
 太平洋戦争という呼称でよばれることが多い「あの」戦争を,当時,日本政府は「大東亜戦争」と称していた。アジア地域を主な対象とした戦争だとの意識があったわけだし,実際に戦闘はアジア各地でも展開されており,最近は「アジア太平洋戦争」という呼称も出てきて徐々に定着しつつある。この本は,大東亜共栄圏建設をも理念として掲げた戦争が,アジア(特に東南アジア)地域とそこに住む人びとにとって,どのような実態と意味をもつものだったのかをわかりやすく説明している。
保阪正康『父が子に語る昭和史』ふたばらいふ新書
 昭和史を語りかける口調で,できるだけかみ砕いて説明しようとしたもの。金融恐慌から中曽根内閣までを扱っている。やや分量が多いものの,読みやすいと思う。
角山栄『茶の世界史』中公新書、1980
 茶に魅せられ茶を求めることから、ヨーロッパ、とりわけイギリスの近代史は始まる。と聞いて違和感を覚える人は多いかもしれない。イギリスなどヨーロッパとアジアとの関わりを、ちょっと違った視点から見てみたい。なお、このようにある商品を軸に世界史を書いたものには、川北稔『砂糖の世界史』(岩波ジュニア新書)、臼井隆一郎『コーヒーが廻り世界史が廻る』中公新書)などがある。
加藤祐三『黒船前後の世界』ちくま学芸文庫、1994
 江戸幕末期,日本は欧米諸国に不平等条約を押し付けられ,従属的な立場で欧米主導の国際社会に組み込まれた,といえばその通りなのだが,日本と清とでは同じ「不平等条約」「従属的な立場」といっても,事態がずいぶんと異なる。日本をつねに<被害者の立場>に置こうとする視座からは,その相違点など顧みるほどのものではないかもしれない。しかし,その違いが近代への対応の差ともなって現れてくる。<開国>を意識的にみてみたい。なお,加藤氏には『幕末外交と日本』(ちくま新書,2004)もあるが,まだ読んでいないので内容は不明。ただ,アマゾンなどでのレビューを読む限り,『黒船前後の世界』とさほど変わりはなさそうだ。
岩井忠熊『西園寺公望』岩波新書,2003
 西園寺公望という,ひとりの人物を通して近代史をながめてみる素材としてちょうどよいと言えます。
中村隆英『昭和経済史』(岩波現代文庫,2007,原著は1986)
 昭和60年間の経済動向を概観したもので,講義の速記録に基づいているので読みやすい。
吉田守男『日本の古都はなぜ空襲を免れたか』朝日文庫,2002
 アメリカは当初,原爆投下の第1目標を京都に設定し,さらに,広島・長崎に2発の原爆が投下されたあとも,京都を想定しながら3発目の原爆投下を予定していた,という。だからこそ......。『京都に原爆を投下せよ ウォーナー伝説の真実』(角川書店,1995)の文庫版。受験のために読む本ではないが。
吉田裕『昭和天皇の終戦史』岩波新書,1992
 アジア太平洋戦争の終結をめぐって昭和天皇や側近の宮中官僚たちがどのように行動したか,「国体護持」に向けてどのような工作を転回したのか。終戦工作から対GHQ工作にいたる彼らの行動を明らかにしている。
豊下楢彦『安保条約の成立 吉田外交と天皇外交』岩波新書,1996
 日米安保条約とは,アメリカが極東における勢力確保のため日本に「ただ乗り」した条約であるが,なぜそのような一方的な駐軍協定となったのか,その経緯をさぐったもの。
石見徹『世界史リブレット55 国際経済体制の再建から多極化へ』(山川出版社,1996)
 第二次世界大戦後の国際経済の動きが俯瞰できる。
橋本寿郎『戦後の日本経済』岩波新書,1995
 敗戦後から1990年代初までの経済動向を概説してある。受験日本史というレベルを考えると,やや専門的で細かいか。
中村政則『戦後史』岩波新書,2005
 第二次世界大戦後の日本とそれを取り巻く情勢をコンパクトに,それでもなお濃密にまとめてある。受験対応で使うには難解なように思う(とりわけ占領期の記述はやや概念的)。
中馬清福『密約外交』文春新書,2002
 戦前についても扱ってあるが,戦後の日米安保体制をめぐる密約を中心としている。ウラが知れて面白いというかなんというか.....。まぁ読んでみてください。
佐藤卓巳『八月十五日の神話 −終戦記念日のメディア学』ちくま新書,2005
 8月15日はポツダム宣言受諾の日でもなければ,終戦の詔書が発せられた日でもないし,また降伏文書に調印して正式に降伏した日でもない。では,いわゆる終戦記念日は何を根拠として,どのように形作られたのか?
関岡英之『拒否できない日本』文春新書,2004
 1980年代半ば以降,アメリカが日本に対してどのような構造改革を求めてきたか,そしてそれが日本においていかに具体化されたのかを明らかにしている。受験には直接関係のない話かもしれないが,現在を考えるうえでは読んでおいてよい。

 

≪その他≫

高良倉吉『琉球王国』(岩波新書,1993)
 日本史にとって「外国史」であった琉球の歴史を俯瞰した好著。「「琉球王国」を包摂していく過程のなかで,日本の国家と社会のあり方が逆に規定されていったことこそ重要である」との断定は,考えさせられるものがあります。
藤原明『日本の偽書』文春新書、2004
 古事記・日本書紀以前の書物などといった荒唐無稽なうたい文句をもつニセ歴史書を取り上げ、どのようにニセ歴史書が登場し、ある一定の人びとに受容されていったのかを探っている(青森県の「キリストの墓」も登場)。ちょっとした息抜きにいいかな。
長谷部恭男・杉田敦『これが憲法だ!』(朝日新書,2006)
 憲法改正が取り沙汰される昨今,気鋭の憲法学者長谷部氏の意見に耳を傾けてみたい。