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年度 2010年

設問番号 第3問


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【解答例】
1内村鑑三不敬事件。キリスト教徒の内村鑑三が教育勅語に拝礼しなかったことから非難をうけ,教壇を追われた。
2文部省は日中戦争開始の直前に発行した『国体の本義』を全国に配布し,天皇中心の国体の尊厳を説いて自由主義や個人主義を排撃し,国民教化をはかった。さらに,第二次近衛内閣が小学校を国民学校に改組し,皇国民の錬成につとめた。
3日本語の使用や神社参拝を強制するなど徹底した同化政策が実施され,朝鮮では姓名を日本風に変更させる創氏改名が行われた。
4教育基本法では個人の尊厳の尊重を理念に掲げ,教育の機会均等や男女共学の原則,義務教育9年制をうたった。そして,学校教育法が定められ,旧来の複線型の教育体系に代わって六・三・三・四制による単線型の教育体系が採用されるとともに,各地方自治体ごとに公選による教育委員会が設置され,旧来の文部省による中央集権的な教育行政を排し,教育行政の地方分権化がはかられた。
(総計398字)


【解法の手がかり】

問1
問われているのは,教育勅語を中心とした教育が強制力を伴いながら定着がはかられたことを代表する事件をあげてその内容を説明すること。
事件は内村鑑三不敬事件。キリスト教徒内村鑑三が教育勅語への拝礼をおこたったことから非難をあび,教職を追われたうえ,井上哲次郎らによってキリスト教排撃の動きが強まった。

問2
問われているのは,日中戦争以降の戦時体制の下で思想統制を担った教育施策。
日中戦争以降の教育施策として思い浮かべることができるのは国民学校令(ナチス・ドイツにならい,皇国民の錬成を掲げて小学校を改組)くらいかもしれない。しかし,これは「思想統制を担った」事例とは言いにくい。そこで,日中戦争開始まえに文部省が配布した「国体の本義」と,それに基づいて文部省教学局のもとで進められた国民教化を想起したい(教学局そのものは細かすぎるが)。その際,問4との対比を意識し,天皇を中心とする国体の尊厳が強調されたことを記しておくとよい。

問3
問われているのは,戦時下の朝鮮や台湾での皇民化政策。
皇民化政策が徹底した同化政策であることを説明したうえで,その内容,つまり日本語使用や神社参拝の強制が行われたこと,とりわけ朝鮮では創氏改名が実施されたことを述べておけばよい。

問4
問われているのは,教育の民主化に基づく改革。
教育基本法についてはリード文にあげられているものの,内容が記されていないので,内容を説明しておく。個人の尊厳を尊重し,真理と平和を希求する人間の育成を教育理念として提示し,機会均等・男女共学・義務教育9年制を掲げる。
そのうえで,学校教育法を定め,それまでの複線型の教育体系に代えて六・三・三・四制による単線型の教育体系が採用されたこと,それまでの文部省による中央集権的な教育行政を排し,各地方自治体に公選制の教育委員会を設置して教育行政の地方分権化をはかったこと,を説明しておきたい。