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年度 1999年

設問番号 第2問


次の(A),(B),二つの法律条文は,ある法律の改正前と改正後の条文である。これを読んで,下記の問いに答えよ。(400字以内)

(A) 第一条 国体ヲ変革シ,又ハ私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シ,又ハ情ヲ知リテ之ニ加入シタル者ハ,十年以下ノ懲役,又ハ禁錮ニ処ス。(以下略)
(B) 第一条 国体ヲ変革スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者,又ハ結社ノ役員其他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ,死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役若クハ禁錮ニ処シ,情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者,又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ,二年以上ノ有期懲役又ハ禁錮ニ処ス。私有財産制度ヲ否認スルコトヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者,結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ,十年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス。(以下略)

問1 この法律(A)は,1925年に制定されたものであるが,この法律とは何か。また,この法律がこの年に制定された背景にはいくつかの事実があった。政府が,この時期に,かかる法律を制定するにいたった背景として考えられる事実を,三つ記せ。
問2 (A)の法律は,1928年3月に,本格的に発動された。この発動された事件とは何か。また,この法律が,この時期に本格的に発動された理由を具体的に述べよ。
問3 (A)の法律を発動するとともに,政府当局は,いくつかの措置をとった。その一つは,(A)の法律の改正であるが,それ以外にも重要な措置をとった。とられた措置のうち,ひとつをあげよ。
問4 政府は,(A)の法律の本格的発動の直後,この法律の改正を試みた。改正後の法律の条文が(B)である。この改正で大きく変わった点を二つあげ,その理由をそれぞれ記せ。また,この改正は,通常の法改正とは異なる形式で行なわれ,当時大きな論議を呼んだが,それはいかなる形式で行なわれたのか。それは,いかなる問題があると批判されたのか。


【解答例】
1治安維持法。虎ノ門事件など社会主義の浸透,普通選挙法の制定,日ソ基本条約によるソ連との国交樹立。
2三・一五事件。同年に男子普通選挙が初めて実施された際,非合法下の日本共産党が党員を労働農民党候補者として立候補させ,公然と選挙活動を展開したため。
3特別高等警察を全国の各道府県にも設置した。
4共産党が君主制廃止の主張を掲げて選挙活動を展開したため,国体の変革を目的とする結社を組織したり,その指導者となった者については罰則規定を強化し,死刑を最高刑とした。共産党は非合法組織であり,加入者の確定が困難であったため,目的遂行罪を新たに設けて支持者・協力者も取締りの対象とした。また,改正は緊急勅令を用いて行われた。緊急勅令は帝国議会閉会の場合に限って天皇が発することができた勅令で,法律と同じ効力をもつと規定されたが,その発令権は議会の協賛なしに行使できる天皇大権のひとつであり,議会軽視と批判された。
(総計400字)