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年度 2008年

設問番号 第3問

テーマ 江戸後期の農業・食糧問題と寛政改革/近世


問題をみる
寛政改革については,さまざまな既知の知識があるだろうが,Aは資料文に即して考える必要がある。そして,Bについても「その問題に対処するため」と表現されている以上,既知の知識をそのままに表現してはならない。


問われているのは,当時の農業や食糧について松平定信がどのような問題があると認識していたか。
そこで,農業と食糧とが対象とされている点に注意しながら,資料文の内容を把握していこう。

資料文(1)
○「耕す者」の減少←原因:「離散」による

農業従事者の減少

資料文(2)
○商業的農業が活発化=「煙草を作ったり,養蚕をしたり,また藍や紅花を作るなど」→影響:米の減産=「米はいよいよ少なくなっている」
○農家の奢侈化=「農家も今は多く米を食べ」(米消費の増加),「酒も濁り酒は好まず,かつ村々に髪結床などもあり」
○村々での非農業従事者の増加=「農業以外で生計を立てようとしている」

商業的農業の活発化や非農業従事者の増加により米が減産
農家の食糧=米消費が増加

資料文(3)
○米の減産←原因:異常気象(「近年水害なども多く」)
○「不時の凶作があれば,どれほど困難な事態が生じるであろうか。恐ろしいことである」

飢饉発生とその時の「困難な事態」に対する警戒

さて,この「困難な事態」とは何か?
設問では食糧に焦点があたっており,かつ米の減産,米消費の増加が資料文で触れられていることを念頭におけば,食糧危機であることと判断できる。


問われているのは,「その問題」に対処するため,寛政改革でとられた政策。
「その問題」とは,端的には食糧危機であるが,それをもたらす事情を考えれば,設問Aで説明したこと全てを包括するものと考えるのが適当である。つまり,米の減産の背景である農業従事者の減少(離村者と村在住の非農業従事者の増加),商業的農業の活発化,米消費の増加に象徴される農民生活の奢侈化,飢饉発生に対処するための政策を具体的に考えていけばよい。

○米の減産の背景である農業従事者の減少(離村者と村在住の非農業従事者の増加)
 旧里帰農令で都市に流入した貧民の帰村を奨励
 出稼ぎを制限
○商業的農業の活発化,米消費の増加に象徴される農民生活の奢侈化
 風俗取締りや倹約令
○飢饉発生
 囲米や義倉・社倉の設置


(解答例)
A離村者や非農業従事者の増加,商業的農業の拡大で米が減産となる一方,米の消費が増大したため,飢饉時の食糧危機を警戒した。
B旧里帰農令や出稼ぎ制限により村々の人口を確保し,農業従事者の減少を防止する一方,風俗取締りを強化して倹約を奨励することにより,米消費や米以外の農作物への需要を抑制しようとした。そして,飢饉に備えて囲米を命じ,義倉・社倉に米穀を備蓄させた。