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年度 2009年

設問番号 第4問

テーマ 昭和初期の農業恐慌


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問われているのは,昭和恐慌の際における,現在とは異なる「農村の危機」の?内容,?背景。条件として,4つの指定語句を使うことが求められている。
設問文で,「現在」における「農村の危機」は農業就業者の急激な減少にある,と指摘されている点に注目すれば,指定語句から言えば,「農村人口」の(相対的な)過剰に焦点をあててよい。

では,農村人口の相対的な過剰はどのような要因から生じたのか。
一つは,いわゆる農業恐慌。豊作による米価の下落,世界恐慌の影響による生糸の対米輸出の激減にともなう繭価の下落を背景として,米作と養蚕を軸とする農村経済が大きく動揺し,農業恐慌が発生した。
こうした状況に追いうちをかけたのが,昭和恐慌により都市で増大した失業者が故郷の農村に戻ってきたこと。農業恐慌が生じている農村には,彼らを受け入れるだけに十分な就業機会は存在しなかった(「図」によれば,1930年には1920年に比べてわずかに農林水産業就業者が増加しているが)。そのため,農村人口は過剰となり,農家を大きく圧迫した。

こうした状況のなか,農家の困窮は激しく,子女の身売りや欠食児童の増加などの社会問題が深刻化した。

なお,問題文には「図を手がかりとして」とあるものの,昭和恐慌を契機として農林水産業就業者の数がどのように推移したのかを判断するには余りにアバウト。少なくとも1920年から1940年までのデータをもう少し細かく(毎年,もしくは2・3年ごと)示してもらわないと分かりづらいが,とりあえず,1920年,1940年との対比から,1930年に「農林水産業」就業者数が微増していることを確認しておけばよい。それとともに「手がかり」とすべきは設問文。高度経済成長期以降の特徴として,農業就業者の急激な減少をあげている点に注目したい。そこから,昭和恐慌期における農村人口の(相対的な)過剰さに気づきたい。


【解答例】
豊作により米価が下落し,世界恐慌の影響による生糸の対米輸出の激減に伴って繭価が下落したことを背景として,米作と養蚕を軸とする農村経済は打撃を受けた。その上,昭和恐慌により増大した都市の失業者が帰農したため,農村人口が過剰となっていた。そのため,農家の困窮は深刻で,子女の身売りや欠食児童が増加した。(149字)