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年度 1979年

設問番号 第4問

テーマ 三国干渉への日本政府の対応策/近代


問題をみる
設問の要求は,「露,独,仏の勧告」に対する日本政府の対応策が,最終的に決定されるに至る論議の経過。
条件として,史料として挙げられている回想録の筆者の情勢判断を中心として説明することが求められている。

回想録の筆者の情勢判断を中心とせよというのだから史料を要約しよう。
1.広島で御前会議を開催
→伊藤博文首相の提案。
 第一案…露,独,仏の勧告を拒絶する
 第二案…列国会議を招請し,遼東半島の問題をその会議で処理する
 第三案…三国の勧告を受け入れ,清国に遼東半島を還付する
2.御前会議では第二案と決定。
3.伊藤首相らが病気療養中の「余」を訪ねて意見をきく
 →「余」は反対
反対理由
(1)5・6カ国が参加する列国会議を開くには時間がかかり過ぎ,和戦未定のまま事態がすすむのは時局の困難を増長するだけである。
(2)列国会議では,列国がそれぞれの利害を主張することが予想され,会議の主題を遼東半島問題だけに限定することができず,列国がさまざまな注文をもちだしてきて,最終的に下関条約の全体を破滅するに至る恐れがある。これは,日本から好んで列国の新しい干渉を導くのと同じである。
4.伊藤・松方・野村も「余」の説を首肯した。
5.「余」による対応策の提案
露,独,仏三国との交渉が長引くと,清国がその機に乗じて下関条約の批准を放棄し,下関条約が空文に帰してしまう可能性があるので,露,独,仏三国には譲歩せざるをえない。つまり,「余」は第三案を薦めた。
6.野村内相が広島に戻り,第三案でいくことについて明治天皇の裁可を得た。


(解答例)
三国干渉をうけた日本政府は,御前会議の結果,露独仏3国以外に2・3カ国を加えて列国会議を招請するとの対応策をいったん決定した。ところが,御前会議を欠席していた陸奥宗光外相が,列国会議を開くには時間がかかり過ぎ,清国がその機に乗じて下関条約の批准を放棄する可能性があり,さらに列国会議で列国がそれぞれの利害を主張し,新たな干渉を招来する恐れがあるとの情勢判断から,下関条約の批准を優先させ,三国干渉は受諾すべきことを主張した。その主張に伊藤首相らも同意し,日本政府の対応策として最終決定された。