年度 1977年

設問番号 第2問


以下に掲げたのは、過去の法令や文書の一部を現代語訳したものである。これを参考として、奈良時代から戦国時代にいたるまでの相続制度の推移と女性の地位の変化の大勢を300字以内(句読点も1字に数える)にまとめて述べよ。その際、以下に掲げた文章の一部を引用したり、また叙述の典拠を符号で示したりする必要はない。

(A) およそ相続に際しては、家人・奴婢や田宅・資財はすべて合計して、嫡母・継母・嫡子はそれぞれ二、庶子は一、家にある女子は男子の半分ずつの割合で分割せよ。(養老令の一部)

(B) 所領を女子に譲った後に、親がこれをとり返してもよいかどうか、ということ、
 女子にもし親にそむく行為があれば、父母の意志通りに没収してさしつかえない。(御成敗式目の一部)

(C) 所領を子息に譲り、幕府から安堵をうけた場合でも、不孝があれば、これをとり返し、他の子息に譲り与えること。
 これは父母の意志に任せるとすでに定めた通りである。父母がとり返し、他の子息に譲り与えたら、それにしたがって安堵を与える。(御成敗式目の一部)

(D) 肥前国戸町浦の一部は、娘に譲り与えた土地である。しかし女子の相伝の所領は、結局は他人の財産になってしまう心配があるから、娘の死後は嫡子の子孫が知行することにせよ。(戸町浦の地頭だった武士が、1302年に記した文書の一部)

(E) 能登国万行保の東方の地頭職は、ながく子息の真将に譲る。ここは狭くはあるが、先祖から相伝してきた所領である。男子が数人あれば、嫡庶を問わず器量のある者一人を選んで譲れ。けっして何人もに分けて譲ってはならない。また後家や女子に譲ってもいけない。ただし男子がなければ、女子でも一人だけに譲れ。またこの土地を他人に売却してはならない。この三ケ条のいましめをかたく守って、これにそむくな。(万行保東方の地頭だった武士が、1335年に書いた譲状の一部)

(F) 人々の譲りのこと。
 実子に譲る場合でも主君に申し上げて、すべて命令に従え。勝手に譲ることはかたく禁止する。(長宗我部元親百箇条の一部)

(G) 夫の留守の社寺参詣や物見遊山を一切禁止する。また、夫が留守の時には、たとえ商人でも親類でも、男を家に立入らせてはならない。ただ親子兄弟だけは別である。(長宗我部元親百箇条の一部)