年度 1983年

設問番号 第4問


下記の史料は、ワシントン会議に際して、日本政府が全権に与えた訓令の一節である。ここに述べられている方針を政府が訓令したのは、いかなる事情によると考えられるか。当時の日本の国際的立場と関連づけて、その事情を210字(句読点も1字に数える)以内で説明せよ。

 華盛頓会議に対する帝国全権の一般方針を列挙せば左の如し。
一 (省略)
二 (前略)米国との親善円満なる関係を保持することは、帝国の特に重きを置く所なるを以て、本会議に於ても右関係を益々強固ならしむるの結果をもたらすことに力を致さるべし
三 (省略)
四 太平洋及び極東問題の討議に当り、原則及び政策の樹立並びに適用上、列国一般に利害関係ある諸問題に就き共通の諒解を遂ぐる為これを詮議することは、帝国に於て異議なき所なり。従って帝国にとり重要の関係ある既成事実もしくは特定国間限りの問題と雖も、右の目的を以てこれを論議することは差支へなきも、進んでこれを審議決定することは反対せらるべく、また独り帝国過去の施措政策のみを批判せんとするが如き形勢を生ぜしめざる様、臨機適応の措置をとらるべし。
五 今回の会議の主眼は軍備制限にありて、太平洋及び極東問題はこれに関連して討議せらるべきものなるに顧み、会議に於ては、先づ軍備制限を討議し、次いで太平洋及び極東問題に移ることを主張せらるべし。もっとも会議の情勢上、右の主張の貫徹困難なる場合には、少くとも両問題を並行して討議することに決定を見る様措置せられたく、もしまた、これが貫徹の見込なきときは、軍備制限を主眼とするの趣旨を失はざる限り、太平洋及び極東問題を先議することは同意せられて差支へなし。
(六以下省略)

(注 史料の文章は読み易くするため、多少書き直した所がある)