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筑波大学 個別学力検査等試験問題【前期日程】(日本史B)

年度 1996年度(平成8年度)  設問番号 第3問

テーマ 18世紀半ばの幕府・大名の財政窮乏と社会/近世


次の史料は『経済録拾遺』の一節である。史料中の下線部分(1),(2)を具体的に説明しながら,当時の政治と社会について論述せよ。(400字以内)

 近来諸侯大小ト無ク,(1)国用不足シテ貧困スルコト甚シ。家臣ノ禄俸ヲ借ルコト,少キハ十分ノ一,多キハ十分ノ五六ナリ。ソレニテ足ラザレバ,(2)国民ヨリ金ヲ出サシメテ急ヲ救ウ。猶足ラザレバ,江戸・京・大坂ノ富商大賈ノ金ヲ借ルコト,年年ニ已ズ。借ルノミニテ還スコト罕マレバ,子又子ヲ生テ,宿債(注)増多スルコト幾倍トイフコトヲ知ラズ。昔熊沢了介ガ,海内ノ諸侯ノ借金ノ数ハ,日本ニアラユル金ノ数ニ百倍ナルベシトイヘルハ,寛文・延宝ノ年ノ事ナリ。ソレヨリ七十年ヲ経タレバ,今ハ千倍ナルベシ。今諸侯ノ借金ヲ数ノ如ク償ントセバ,有名無実ノ金何レノ処ヨリ出ンヤ。然レバ只如何ニモシテ,当前ノ急ヲ救テ,其日其時ヲ過スヨリ外ノ計ナシ。
(注) 宿債というのは,年を越した借金のことである。