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一揆と強訴の違い

メールでの質問への応答です(1999.11.7)。

>一揆と強訴の違いがわかりません

どこの教科書を使っているのかわかりませんが,もし山川の詳説日本史【改訂版】を使っているのでしたら,p.122の脚注をみてください。そこには一揆を次のように説明してあります。

「中世の人びとは,ふつうの状態ではなしえない目的を実現するために,神仏に誓約して一致団結した状態(一味同心)の集団をしばしば結成した。これを一揆といい(後略)」
このように書かれていますが,もともとは“心をひとつにすること”“行動を共にすること”という意味の言葉ですから,「集団」だけを指すわけではなく「一致団結した状態の集団を結成して行動を起こすこと」も一揆です。
大雑把に言ってしまえば,一揆とは“仲間をつくって一緒に行動すること”(あるいはその仲間)なんです。

ただし,この一揆という言葉だけでは,“誰が”“どんな目的のために”集団を結成し“どのような”行動をとったのかまではわかりません。
一揆には,国人が結んだ国人一揆,惣村の百姓によるもの(荘家の一揆ともいう),惣村を母体とした村々の連合を基礎に地侍・農民らが結んだ土一揆,江戸時代の百姓一揆などさまざまありますが,教科書で「強訴」が使われているのは,室町時代の惣村(→荘家の一揆)と江戸時代の百姓一揆のところです。室町時代であれ江戸時代であれ,百姓が要求を実現させる ために一揆を結び,“領主のもとに大挙しておしかけた”のが強訴です。先に<“どのような”行動をとったのか>と書きましたが,一揆を結んで行う行動パターンの1つが強訴というわけです。それ以外の行動パターンに逃散があります。
[1999.11.7]