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糸割符制度について

メールでの質問への応答です(2003.9.25)。

> こんにちは。糸割符制度がよくわからないのですが、ポルトガル
> 船が独占していた外国貿易の利益を確保するために行われたと辞書にあるので
> すが、ポルトガル船が外国貿易の利益を独占していたというのはどういうこと
> なんですか?また糸割符仲間に一括購入させることでどうして利益の確保が出
> 来たのかよくわかりません。お願いします。

ポルトガルが(ほぼ)独占していたのは,「外国貿易」というより正確には「生糸貿易」です。
南蛮貿易においてポルトガルが日本にもたらしていた主たる商品が中国産生糸であったことは知っていますよね?ところで,当時,日中間の直接貿易は行われていましたか?中国の民間商人もいたことはいましたが,規模から言うとポルトガル人が日中間の貿易を事実上,掌握していました。ですから,中国産生糸の供給はポルトガル人が(ほぼ)一手に独占していたわけです。
このように供給がある特定の勢力に独占されていると,価格決定の主導権はその特定の勢力−この場合はポルトガル商人−に握られてしまいますよね?だから,ポルトガルが「生糸貿易」の利益を独占していた,というわけです。

糸割符仲間は,徳川政権がポルトガルの生糸貿易での利益独占を排除するため,京都・堺・長崎の特定商人たちに組織させた同業者団体ですが,徳川政権はポルトガル人がもたらす生糸は,必ず糸割符仲間が独占的に買い上げるような仕組みを作ったのです(これが糸割符制度)。糸割符仲間に加入していない商人は,ポルトガル人から中国産生糸を購入できないように統制したわけです。
こうした仕組みをつくりあげれば,ポルトガル人が中国産生糸の輸入価格を不当につりあげて利益を得ることができなくなるというわけです。