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天皇機関説

メールでの質問への応答です(2003.02.05)。

> 日本史を教えているのですが、美濃部達吉の「天皇機関説」を生徒へわかりやすく説
> 明する方法があれば教えていただきたいのですが…

天皇機関説を説明するときは、いわゆる天皇主権説と対比させるのがよいと思います。
そして、天皇機関説を「天皇=機関」説、天皇主権説を「天皇=現人神」説と説明し直した上で(天皇機関説も天皇が主権をもつことを否定しているわけではない)、次のような図解で説明するのはどうでしょうか?

天皇機関説と天皇主権説の図解

つまり、天皇主権説(「天皇=現人神」説)では、天皇は国家(国民のまとまり)を超えた存在で、国家を外から支配(統治)する存在と考えられるのに対し、天皇機関説では、国家(国民のまとまり)のなかに天皇も含まれているのです。

ですから、天皇主権説(「天皇=現人神」説)からすれば、天皇は内閣の輔弼や帝国議会の協賛をうけながら統治を行うといっても、内閣や帝国議会に必ずしも拘束されず、ある程度自由な立場から統治を行うことができます。いいかえれば、天皇のもっている権限とは、憲法などの法−内閣や帝国議会の組織・権限を定めたもの−によってのみ規定されるものではなく、法成立以前から存在している、いわば自然的な権利(皇祖神から受け継いだ神権)だと考えるわけです。
それに対して天皇機関説(「天皇=機関」説)では、天皇の権限を憲法などの法によって初めて規定されたもの(権能)と考え、万能無制限なものではなく、内閣の輔弼や帝国議会の協賛があって初めて行使できるものと考えます。

比喩的に言えば、天皇主権説の天皇は、自分の自由なように企業を経営するワンマン社長、天皇機関説の天皇は、重役たちの合議に基づいてそれに拘束されながら経営をすすめるサラリーマン社長、というところでしょうか。
[2003.02.05]