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参勤交代の意味

メールでの質問への応答です(2003.2.15)。

> 参勤交代についてわからないことがあるのですが、参勤交代の意義は大名にお金
> を使わせることだと思ったいたのですが、最近、参勤交代制は大名が将軍の家臣
> であることを明確にする意味もあるということを知りました。また江戸には常に
> 半数ずつの大名が軍備を伴って結集するわけで、幕府のもつ軍事力を全国に示す
> と言う役割も果たした、ということを知ったのですが、意味がイマイチよくわか
> りません。教えてください。

参勤交代とは,あくまでも大名の将軍に対する奉公の1つでして,「大名にお金を使わせること」は目的ではなく結果,それも幕府が意図しなかった結果でしかありません‐そもそも幕府が参勤交代に費用をかけるなと命じているにもかかわらず,諸大名はメンツを保つために莫大な費用をかけたのが実態でしたから‐。

では,奉公の1つとして参勤交代が制度化されたことの意味はどこにあったかと言えば,次の2点を指摘することができます。

(1)諸大名の幕府に対する忠誠を示す儀礼を整備
大坂の陣により戦国期以来の争乱に終止符が打たれてしまい(元和偃武),幕府が諸大名に対して直接,軍事動員する機会がなくなってしまった状態のもと,参勤交代は軍役に準ずる奉公として位置づけられ,諸大名の幕府に対する忠誠を示すための最も重要な儀礼として制度化されたのです。ですから,石高に応じた規模の家臣団を率いて諸大名は国元と江戸を往復したのです。

(2)大名統制を確保
大名は1年おきに江戸に1年間滞在することを義務づけられたため,常に,大名の半数がその家臣団とともに江戸で幕府の指揮下に置かれるという状態ができあがりました。こうして幕府の擁する軍事力を諸大名に対して示すことが可能になりますし,さらには大名の半数を常に幕府の直接監視下に置くことが可能になったのです。
さらに,江戸が将軍の城下町であることに注目すれば,ある意味で城下町集住策だと言えます。もちろん不完全です。しかし,参勤交代により幕府の求心力を確保し,諸大名の地方割拠を抑制することが可能となります。

こうした2つの意味で,参勤交代は大名統制の根幹だったのです。