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神仏分離とは?

メールでの質問への応答です(2000.7.20,少し手を加えてあります)。
> 廃仏毀釈の定義(?)についてです。廃仏毀釈や、神仏分離は神道を日本の
> 国教とするため行われ、その結果多くの寺院が破壊されたということですが、その神道
> というのは、天皇の系譜をついだもののみをさすのでしょうか。
> 私は今まで単純に「仏教」と「神道」とを分離したのだと思っていたのですが、その後の
> 日本の神国化を考えると、単なる神さま(地域に根差した五穀豊穣の神様など)は
> 含まずに、天皇を尊ぶような(例えば伊勢神宮)神社のみを保護したのでしょうか。

神仏分離は神仏習合のあり方を否定して,神道を仏教から分離・独立させようとした
ものです。ですから,「単なる神さま(地域に根差した五穀豊穣の神様など)」も含
めて仏教から分離・独立されていきます。

もともと,さまざまな神さまはそれぞれ本地仏をもっていましたが(仏さまが神さま
の本当の姿と解釈されていました−たとえば天照大神の場合は大日如来−),そうし
た観念が否定されるとともに,僧侶が神前で読経するという慣習や神社内にたてられ
た神宮寺の存在も否定されました。さらに,神社の扱いを国家から受けなくなった社
や統廃合されてしまった神社も存在します。

こうした神仏分離のあと,神道国教化が進められますが,それの挫折をうけて成立し
たのが国家神道(神社神道)です。
伊勢神宮を神社の本宗と定め,それを頂点としてさまざまな神社を格付けしたうえで
(神社明細帳に登録されます),そうした神社が“国家の祭祀”を担当するものとし
て再編成されたのです。つまり,神社(あるいは神さま)は“地域住民の崇敬を集め
る神さま”としての存在以前に,“万世一系の天皇が統治するという国体を護持する
ための装置”としての機能が優先されるようになったわけです。森田さんの表現を借
りれば,“単なる神さま(地域に根差した五穀豊穣の神様など)”も全て“天皇を尊
ぶような(例えば伊勢神宮)神社”として存在・機能することを要求されるようにな
った,と言えます。

このように,神仏分離以前のさまざまな「神道(神々への信仰)」とは性格の異なる
新しい「神道」として国家神道(神社神道)が形成されるに至ったのですが,第二次
世界大戦後の“国家と神道の分離”により国家神道(神社神道)は解体します。そし
て,国家神道(神社神道)のもとに編成されていた神社は,神社本庁を組織し,1つ
の宗教法人として再出発することになります。
[2000.07.20]