年度 2008年
設問番号 第2問
この発問の構成からすると,「日本経済の急激な成長」を「輸入・輸出・国内市場の3つの側面での変化」において説明することが,まず前提として必要で,そのうえで第一次大戦がそれらの変化にどのように影響しているかを説明すればよい(「その結果」については,「変化」を具体的に書いてしまえば説明できる)。
日本経済の急激な成長
○輸入
ドイツからの輸入途絶により化学工業(染料・医薬品・肥料など)の自立が進んだ。
○輸出
中国などアジア市場への綿織物の輸出,ヨーロッパ(露英)への軍需品の輸出,アメリカへの生糸の輸出が増加している。生糸は量的な変化でしかないが,綿織物輸出は綿糸輸出に代わって拡大したものであり,さらに軍需品の輸出は重工業の成長をものがたるものであり,両者ともに質的な変化と言ってよい。
○国内市場
国内における需要の拡大を考えればよい。
まず,企業レベルの需要で言えば,船舶と電力に対する需要の急増をあげることができる。輸出拡大と世界的な船舶不足にともなう海運業の発展,船成金の出現が国内での船舶需要を急増させていたし,電力に関しては,工業原動力の蒸気力から電力への転換が進み,電力需要が急増していた。
そして,個人消費支出も拡大していた。第一次大戦中こそ実質賃金は低下したものの,名目賃金は上昇していたし,賃上げを求める労働運動の高揚は労働者の賃金水準を徐々に高めていた。
次に,第一次大戦がこれらの変化にどのように影響していたのか。
輸入面については,ドイツからの輸入途絶。
輸出面については,ヨーロッパ諸国のアジア市場からの後退,ヨーロッパ諸国での軍需の増大。
国内市場については,輸出拡大と世界的な船舶不足にともなう海運業の発展という間接的な影響。電力需要の増加や賃金上昇にともなう個人消費支出の拡大は,大戦景気にともなうものであり,これまた大戦とは間接的な関連しかない。しかし,国内市場面での変化=急激な成長についても説明することが求められているのだから,このデータも答案に含めることが必要である。
なお,「日本経済の急激な成長」についての説明ではなく,「第一次大戦が日本経済を急激に成長させた理由」が問われていることに注意して,文章を構成してほしい。
問2 類題:1990年第2問
問われているのは,「1920年代に民間会社のサラリーマンを中心とする都市中産階級が増加した」ことを具体的に説明すること。条件として,文章BおよびCを参考にすることが求められている。
まず文章BおよびCの内容把握から。
文章B
○「普通教育以上の教育を受け」→高学歴
○「精神的なる労働をなし,身体的労働を指揮し或は管理する人々」
「精神的なる労働」とは,「身体的労働」と対比されていることから分かるように,肉体的エネルギーの支出ではなく頭脳的エネルギーの支出を主とする労働であり,具体的には企業組織の企画や運営など管理的・事務的な作業,技術開発,医療,教育などがあげられ,さらにジャーナリストや弁護士もこうした労働の職種といえる。
文章C
○「有識無産の精神的,技術的労働者」
基本的に文章Bの表現を言い換えたにすぎない。
以上を念頭に,もう少し具体的に表現すると,次のようになる。
○高学歴者が増加=高度な専門的知識や技術をもつ人々が増加
○事務系統の職場で働く人々が増加
→大戦景気を考えれば,商社や銀行で働く人々が増加していたことは想像がつくはず。
○ジャーナリストが増加
→新聞や雑誌の発行部数の飛躍的な拡大を想起しよう
問3
問われているのは,中・高等教育機関の整備・拡充のうち,大学について,原内閣の改革に焦点をあてて具体的に説明すること。
大学令とその内容(帝国大学以外に単科大学や公立・私立大学の設置が認可された)を説明すればよい。
問4 類題:1990年第2問
問われているのは,サラリーマンを中心とする都市中産階級が「衣食住の生活文化全般に新しい様式を取り入れた」ことを具体的に説明すること。
衣生活
○洋服の普及
食生活
○洋食(カレーライスなど)の普及
住生活
○文化住宅の流行