年度 1991年
設問番号 第3問
次の史料は、1945年11月5日の幣原内閣の閣議決定、「戦争責任等に関する件」の一節である。この閣議決定は、連合国側が実施を予定していた、いわゆる「A級戦犯裁判」に対する日本政府としての対処方針を決めたものであるが、これを読んで以下の問いに答えよ。(400字以内)
左の諸点に準拠し之を堅持すること
(1) 大東亜戦争は帝国が四囲の情勢に鑑み已むを得ざるに出でたるものと信じ居ること。
(2) 天皇陛下に於かせられては飽く迄対米交渉を平和裡に妥結せしめられんことを御軫念 1 あらせられたること。
(3) 天皇陛下に於かせられては開戦の決定、作戦計画の遂行等に関しては憲法運用上確立せられ居る慣例に従はせられ、大本営 2 、政府の決定したる事項を却下遊ばされざりしこと。
(4) 日米交渉継続中に攻撃を加ふることを避けんが為日米交渉打切りの通告方努力せること。
註 1 心をいためること 2 有事における作戦指導の最高機関
問1 第2項中の「対米交渉」、第4項中の「日米交渉」とは何か。その経過や争点についてふれながら具体的に説明せよ。
問2 第2項および第3項は、天皇の戦争責任問題に対する日本政府の公式見解を示している。こうした見解は国際的にも大きな論議をよぶことになるが、明治憲法の上では「開戦の決定」および「作戦計画の遂行」の権限は、それぞれ、どのように規定されていたか。天皇・政府・大本営の関係にも留意しながら具体的に説明せよ。
問3 日本で実際に実施された「A級戦犯裁判」について具体的に説明せよ。