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年度 1980年

設問番号 第1問

テーマ 律令の軍団制と鎌倉の御家人制の比較/古代・中世


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設問の要求は、(1)律令国家の軍団の制度、(2)鎌倉幕府の御家人の制度の、軍事制度としての特色。そして両者を比較することが求められている。

(1)律令国家の軍団の制度
戸籍・計帳による人民支配を基礎
→正丁(21〜60歳男子)3〜4人に1人を兵士として徴発(国家への義務)
→軍団に配属=地方の治安維持、一部が衛士(皇居警備)・防人(九州北部警備)

(2)鎌倉幕府の御家人の制度
武士という職業的戦士身分を基礎(→一族を中心に武士団を構成)
→主従関係(私的な契約関係)のもとに編成=御恩に対する奉公として軍事動員
→軍役(合戦に出陣)や京都大番役(皇居警備)など


(解答例)
律令国家の軍団の制度は、戸籍・計帳による人民支配を基礎とし、21〜60歳男子のうち3〜4人に1人を兵士として徴発したものであり、公民の国家への義務であった。兵士は各地の軍団に配属されて地方の治安維持にあたるとともに、一部は衛士として皇居の警備、防人として九州北部の警備にあたった。鎌倉幕府の御家人の制度は、平安中期以来、武士という特定身分が軍事警察の職能を請負う体制のもとで、将軍と私的な主従関係を結んだ武士によって成り立っていた。御家人は一族を中心として武士団を構成し、将軍から本領安堵・新恩給与という御恩を給付される代わりに、奉公として軍役や皇居警備の京都大番役などに従事した。
【添削例】

≪最初の答案≫
公地公民を原則とした律令国家においては、労役の一環として戸籍・計帳による人民支配に基づいて成年男子の三、四人に一人が兵役の義務を負った。彼らは庸や雑徭は免除されたものの、宮廷警備である衛士や西国の警備である防人の任務につかされ、数年を兵役に捧げた。一方、鎌倉時代においては幕府と土地を仲立ちにした私的な契約である主従関係で結ばれた御家人が軍事の面で活躍した。彼らは一族を中心として武士団を構成し、幕府から本領安堵・新恩給与などの御恩をうけ、軍役や京都大番役などの職務に従事し、奉公をおこなった。

> 労役の一環として
「労役」と表現すると“租税”の一種であるかのように受け取れるが,兵役は租税ではない。その意味でこの表現は不適当。

それ以外はOK。

≪書き直し≫
公地公民を原則とした律令国家においては、公民の義務として戸籍・計帳による人民支配に基づき、成年男子の三、四人に一人が兵役の義務を負った。彼らは庸や雑徭は免除されたものの、宮廷警備である衛士や西国の警備である防人の任務につかされ、数年を兵役に捧げた。一方、鎌倉時代においては幕府と土地を仲立ちにした私的な契約である主従関係で結ばれた御家人が軍事の面で活躍した。彼らは一族を中心として武士団を構成し、幕府から本領安堵・新恩給与などの御恩をうけ、軍役や京都大番役などの職務に従事し、奉公をおこなった。

OKです。