年度 1987年

設問番号 第3問


以下の江戸幕府法令を読み、その農民政策の基調と農民観とについて5行以内で述ベよ。

(1)寛永20年3月の代官に対する法令から
一、身上よき百姓は田地を買い取り、いよいよ宜しくなり、身上成らざるものは田畑を沽却(売却)せしめ、猶々身上成るべからざるの間、向後(以後)田畑売買は停止たるベき事。
一、身上ならざる百姓は、諸代官精を入れ、万事差し引き致すベし、その上にても続きがたきものには、見合いに食物の類これを貸し、身代もち立て侯ように念を入るベき事。

(2)慶安の御蝕書から
一、公儀御法度を恐れ、地頭(領主)・代官の事をおろかに(おろそかに)存ぜず、さて又名主・組頭をば其の親と思うベき事。
一、耕作に精を入れ、田畑の植えよう、同じく拵えように念を入れ、草はえざるように仕るべし、草をよく取り、切々作の間ヘ鍬入れを仕り候えば、作もよく出来、取り実も多くこれ有り。
  付けたり、田畑の境に大豆・小豆など植え、少々足りにも仕るベき事。
一、朝おきを致し、朝草を刈り、昼は田畑耕作にかかり、晩には縄をない、俵をあみ、何にても、それぞの仕事、油断なく仕るベき事。
一、家主・子供・下人等迄、ふだんは成程(でざるだけ)粗飯を食うベし。但し、田畑をおこし、田をうえ、いねを刈り、一入ほねおり申す時分は、ふだんより少し食物をよく仕り、たくさんに食わせ、つかい申すべく候。その心づけあれば、精を出すものに候事。
  年貢さヘすまし候ヘば、百姓ほど心やすきものはこれ無し。よくよくこの趣をこころがけ、子々孫々まで申し伝え、よくよく身持ちをかせぎ申すべきもの也。