年度 1994年
設問番号 第2問
鎌倉末期から南北朝期にかけての時代には、文化が大きく変化した。次に掲げる(a)〜(c)の史料はこの時代の世相を述べたものであるが、これらを手掛かりにして、この時代の文化の新しい傾向とそれをもたらした要因について、5行以内で述べよ。
(a) 人ごとに、我が身にうとき事をのみぞ好める、法師は兵の道を立て、夷(1)は弓ひく術知らず、仏法知りたる気色し、連歌し、管絃をたしなみあへり、(中略)法師のみにもあらず、上達部・殿上人・上ざままで、おしなべて、武を好む人多い。 (『徒然草』)
(b) 誰ヲ師匠トナケレドモ、アマネクハヤル小笠懸(2)、
事新シキ風情ナリ、京・鎌倉ヲコキマゼテ、
一座ソロハヌエセ連歌、在々所々ノ歌連歌、
点者(3)ニナラヌ人ゾナキ、 (『二条河原落書』)
(c) 異国の唐物、高麗の珍物、螢のごとく霞に似たり、交易売買の利潤は、四条・五条の辻(4)に超過し、往来出入の貴賤は、京都・鎌倉に異ならず、およそ御領(5)豊穣にして、甲乙人(6)富裕なり。 (『庭訓往来』、原漢文)
注(1) 東国の武士
(2) 小規模な笠懸の遊び
(3) 連歌の良し悪しを定め、評点を加える人
(4) 京の繁華街として知られた町
(5) 土地、所領
(6) 貴族や武士以外の庶民