年度 1996年

設問番号 第3問


 1830年3月ごろ,阿波地方から始まった御蔭参りは,御札が降ったという噂とともにまたたく間に各地にひろがった。「老いも若きも,子や孫を引き連れ,中には家を閉じて抜け参りに出かける者が多く,下女も台所や井戸端での仕事をそのままにして着のみ着のまま飛び出る者もいる」といわれるように,人々はわれ先に伊勢神宮へと殺到したのである。幕府は当初,主人や親・夫また家主などに無断で家を出て参詣に行くことを禁じたが,人々の熱狂をしずめることはできなかった。こうして「御蔭でさ,ぬけたとさ」と歌い踊りながら伊勢神宮に参詣した人々は,この年の秋までに500万人近くにも達したとされている。

 このような熱狂的な御蔭参りはなぜ発生したのだろうか。参加した人々の階層や行動様式の特徴にふれながら,5行以内で説明せよ。