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年度 2016年

設問番号 第2問


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【解答例】
1職工事情。産業革命が進展する状況下の労働者の実態を調査した報告書である。
2適用対象が職工15人以上を使用する工場に限られたうえ,年少者や女性の就業時間を制限し,その深夜業を禁止したものの,製糸業では時間延長,綿紡績業では期限つきながら深夜業を認めるなどの問題点があった。
(別解)適用対象が15人以上の労働者を使用する工場に限られたうえ,労働者の保護を主眼とする法律であるにも関わらず,年少者や女性の就業時間を制限し深夜業を禁止したものの,男子労働者が対象となっていなかった。
3繊維工業。日清・日露戦争前後に産業革命が進展し,農業社会から工業社会への移行が始まったものの,工業生産額の中心は製糸業や綿紡績業など繊維工業であった。さらに,造船業を除く重工業は欧米諸国に比べて技術力が低かったため重工業製品の多くを欧米諸国からの輸入に依存し,生糸や綿糸の輸出増加にもかかわらず貿易収支は輸入超過であった。こうしたなかで工場法が制定・施行されて女性労働者の待遇改善が進むと,女性が労働者の大半を占める繊維工業では企業利益の減退が予想され,貿易収支のさらなる悪化を招き,日本経済全体の不利益になると政府は考えた。
(総計400字)


【解法の手がかり】
問1
職工事情
産業革命が進展する状況下の労働者の実態を調査したもの。

問2
問われているのは,工場法がもっていた問題点の具体的な内容。
適用範囲が15人以上の工場だけに限られたこと
監督制度が不備であったこと:教科書には載っていない
保護の対象が年少者と女性だけで,男子を対象としていなかったこと:12歳未満の就労を禁止するとともに,15歳未満の年少者と女性を対象として12時間労働制,深夜業の禁止を規定した。(「家」を社会的基礎とする国家の存立基盤への危惧)
特定産業に時間延長や昼夜二交替制を認める:少年・女性の就業時間の限度を12時間とし,その深夜業を禁止した。適用範囲は15人以上を使用する工場に限られ,製糸業などに14時間労働,紡績業に期限つきで深夜業を認めていた。

問3
問われているのは,①反発の大きかった産業はどこか,②その反発を政府が受け入れた理由。②については,当時の産業構造の特徴から説明することが求められている。 ①は繊維工業。
②について。
「工場法は,職工徒弟条例案の段階から含めると立法が意図されてから施行されるまでに30年前後の長い時間を要した」と書かれている点に注目すれば,「当時」とは,日清・日露戦争前後となる。
この時期は,綿紡績業をパイオニアとして機械化が進み,日露戦争前後には綿織物業,そして造船業や鉄鋼業,機械製造業などへも広がり,資本主義社会が確立,農業社会から工業社会への移行が始まった時期である。もっとも,工業社会への移行とはいえ,造船業を除いて日本の重工業は欧米諸国に比べて技術力が低く,そのため重工業製品を欧米諸国からの輸入に依存しており,生産額から言っても綿紡績業や綿織物業,製糸業など繊維工業が多くを占めていた。
これら繊維工業では労働者の大半が女性である。