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年度 2001年

設問番号 第3問


次の文章は,連合国軍最高司令官総司令部(以下GHQと略称)により作成された日本占領の公式の記録のうち,日本国憲法制定過程に関する部分の邦訳である。これを読んで,下記の問いに答えよ。(400字以内)

 憲法問題調査委員会が,1945年10月,幣原内閣総理大臣により,松本烝治博士を委員長にして設置され,直ちに調査を始めた。…(46年)1月のはじめ,彼(松本)は二つの案を提出した。…(1)−A提案せられた改正案は,もっとも保守的な民間草案よりも,さらにずっと遅れたものである。その意図が,明治憲法の字句を修正することによって,…従来通り,漠然として弾力性のある形で,支配層が適宜に適用し解釈できるようにしておくことであったことは全く明瞭である。…2月1日,マッカーサー元帥は,民政局長ホイットニー准将に,松本草案を拒否する詳細な回答書を作成し,日本政府に手交することを命じた。…(1)−Bしかし最高司令官は,さらに慎重に熟慮した結果,彼が基本的と考える諸原則…を具体化した憲法草案を用意するほうがよいという結論に達した。(以下略)
 (制定された新憲法の)(2)第二章は,憲法史上まさに一時期を画すべきものである。戦争の放棄と軍備の禁止とによって,日本における軍部の権力と勢力は破壊され,軍備の負担が日本国民にはなくなった。(以下略)
 第三章は,「国民の権利及び義務」と題されている。…この第三章には,政府が介入してはならぬ個人の活動範囲が定められている。…(3)すべての人の法の下の平等が保障される。…以上をまとめると,個人の市民の自由は,民主主義の基礎として,もっとも広範に保障されている。(以下略)
(宮沢俊義ほか訳「日本の新憲法」『国家学会雑誌』65巻1号,1949年,より)

問1 GHQは,日本政府の憲法改正案に強い不満を示しているが,GHQがもっとも強く不満を持った点は,どこにあったか,下線部(1)−Aに注意して,具体的に指摘せよ。また,日本政府の改正事業に失望したGHQは,当時の国際情勢をにらんで新たな措置をとるに至った。その新たな措置とは何か,なぜそういう措置に出たかを,下線部(1)−Bを参照しつつ簡潔に記せ。
問2 下線部(2)で,GHQは日本国憲法第九条の非武装規定を高く評価しているが,のちにGHQ自らがこの条文の構想とは異なる政策を打ち出すに至った。GHQの方針転換はいかなるものであり,それはどういう背景でなされたのか,またその転換は,直接にはいかなる事件を契機に起こったか,を具体的に記せ。
問3 下線部(3)に記されてある「平等」を実現するために,この時期に,いくつかの重要な改革がなされた。そのうち,とくに,明治憲法下での女性のおかれた差別的地位をなくすためになされた改革を二つあげ,内容を簡潔に説明せよ。


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