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年度 1996年

設問番号 第1問


次の文章を読み,下記の問いに答えよ。(400字以内)

 租税・地代などの収取は,その時代の社会のあり方により,さまざまな形態をとって行われた。律令国家が成立すると,租・庸・調・雑格・兵役などの租税・労役制度が定められた。律令体制の衰退に伴ってこの制度も変質し,荘園制の下では年貢・公事・夫役が収取の基本となった。荘園制を解体した武家領主は,検地などを通じて,戦国大名の貫高制や幕藩権力の石高制という新たな収取制度を作り出した。

問1 律令制的租税・労役制度の特徴を,賦課の対象と内容に留意して説明せよ。
問2 荘園制下の収取の特徴を,律令制的租税・労役制度の変質過程を踏まえて説明せよ。
問3 収取制度としての貫高制・石高制の新しさは何か。そこでの大名・家臣・農民の三者の関係に留意して説明せよ。


【解答例】
1律令制のもとでは人民は戸籍・計帳への登録を通じて戸に編制され,戸ごとに租税・労役を賦課された。田地を対象とした租の比重が低く,正丁など良民男子を対象とする人頭税が中心である点が特徴的で,内容面では布などの現物や労働力の貢納を中心とする点に特徴がある。
2平安時代中期に班田制が終焉し,戸籍・計帳が形骸化するのにともない,租税・労役制度は名を単位とする土地税方式に転換し,名の広さに応じて官物・臨時雑役が賦課されるようになった。それを前提として,荘園制のもとでも名を単位として年貢・公事・夫役が賦課され,名を割り当てられた有力農民らが納入した。
3大名は,貫高制・石高制のもとで土地の規模をそれぞれ銭額・米量に基づいて統一的に把握し,家臣への知行給付・軍役賦課,農民への年貢・諸役賦課の基準とした。このように大名・家臣間の主従関係と武士による農民支配とが統一的に行われた点に貫高制・石高制の新しさがある。
(総計400字)