年度 2003年
設問番号 第2問
【解法の手がかり】
問1
○Aの史料の条文をもつ法律名 →国家総動員法
○この法律を立案し,その後物資動員計画など同法の実施に当たった中心官庁 →企画院
○その他の法律と異なる本法の際立った特徴
内容:戦争や事変に際し,政府が勅令によって人的・物的資源を統制運用することを認めた法律
このうち,「勅令によって」の部分が特徴。
・勅令=国務大臣の輔弼だけにより帝国議会の審議・承認を経ることなく制定される
↓
・政府(内閣)が帝国議会の審議・承認なく諸政策を遂行する権限を帝国議会が承認
↓
・帝国議会の立法(立法協賛)権を形骸化=委任(授権)立法
問2
○本法にもとづいて出された勅令の具体例2つ
国民徴用令
価格等統制令
賃金統制令
など
○「同法令全体」が国民生活に与えた影響
「同法令全体」とは,国家総動員法とそれに基づくさまざまな勅令の総体を指すと考えるのが適当だが,先に答えた具体的な勅令2つの内容をふまえながら説明すればよい。
→軍需優先・民需抑制のもとで国民生活が統制・圧迫された
問3
○Bの史料の政策を進めた内閣総理大臣
史料の出典が「1940年12月閣議決定」であることから考えればよい →近衛文麿
○同内閣による政治・経済を含む全国的な官製指導組織 →大政翼賛会
○全国的な官製指導組織の果たした役割
・全政党が解散して合流 →議会の空洞化を促進
・各分野の諸団体を傘下に編成(末端=町内会・部落会・隣組) →上意下達の行政補助機関
問4
要求:統制経済下(1937〜45年)における(1)民間企業の変化,(2)労働者組織の変化,(3)農業の変化
条件:Bの下線部分に示された企業体制再編の理念を念頭におく
まず条件に注目。
○Bの下線部分「資本,経営,労務ノ有機的一体タル企業」
↓
企業を「有機的一体」と考え,資本(→資本家=株主)や経営(→経営者),労務(→労働者)それぞれの個別的な利益ではなく,全体的な利益を重視・優先しようという発想
なお,個々の企業が個別的な利益を追求することは「国家総合計画ノ下ニ,国民経済ノ構成部分トシテ」という形で抑制され,同時に,「自主的経営ニ任ゼシメ,最高能率ノ発揮ニ依ッテ生産力ヲ増強セシメ」とあるように,各企業の自発性を喚起しながら全体の生産力の増強を図ろうとしている点も意識しておきたい。
このことを念頭におきながら,「1937〜45年」という時期を対象として,(1)〜(3)について知識を確認すればよい。
(1)民間企業の変化
公益(国益)優先の立場から民間企業へ政府の介入が強化→電力(国家)管理法を想起
(2)労働者組織の変化
労資(労使)一体の理念のもとに産業報国会が組織される→労働組合の解散
(3)農業の変化
食糧増産をめざして寄生地主制を抑制,小作料を制限・生産者米価を優遇など→小作料統制令や農地調整法を想起