年度 2004年
設問番号 第1問
次の文章を読んで,下記の問いに答えよ。(問1から問4まですべてで400字以内)
日本各地の歴史はそれぞれに個性的だが,一方では他地域との交流や幕府の政策に影響を受ける側面ももっていた。近世の房総地方(現在の千葉県)の場合をみてみよう。
房総半島東岸の九十九里浜では,地引網で捕ったイワシを乾燥させた[ a ]がさかんに生産されたが,それは(b)他地域における生産力の発展に寄与した。
房総地方の農業生産力は全国的にみてけっして高いわけではなかったので,18世紀後半以降,北部を中心に荒廃する農村が多くみられた。関東などの農村荒廃に対処するため,c松平定信は農村復興策を改革政治の一つの柱とした。また,19世紀に入ると,牢人[ d ]が房総北部などで独自の仕法を行って農村の再建を目指したが,幕府に嫌疑をかけられて自殺した。
人々が農村荒廃とたたかう一方で,新しい文化や思想が農村に普及していった。房総地方は江戸に近かったこともあって,18世紀後半以降,江戸の知識人・文化人が頻繁に訪れ,地域の人々と交流を深めた。俳人小林一茶や[ e ]を唱えた平田篤胤は房総村々の百姓たちの間に多くの共鳴者・後援者を獲得した。
また,18世紀末以降,欧米諸国との接触の頻度が増すにつれて,幕府は海から江戸が攻撃されることを防ぐために,(f)房総など江戸湾岸の警備を強化した。
このように地域の歴史は独自性をもつと同時に,そこに全国的な動向の反映を読み取ることもできるのである。
問1 空欄aに当てはまる語句を記せ。また,下線部bの内容を具体例をあげて説明せよ。
問2 下線部cで松平定信が実施した農村対策を二つあげて,その内容を説明せよ。また,空欄dに当てはまる語句を記せ。
問3 空欄eに当てはまる語句を記せ。また,百姓たちが小林一茶や平田篤胤を支持・後援した社会的・経済的・文化的背景について述べよ。
問4 下線部fにある房総などの江戸湾岸の警備強化について,その内容を具体的に説明せよ。