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年度 1993年

設問番号 第2問


 1881(明治14)年の政変で国会開設を公約した政府は,それにそなえて官制の改革や諸制度の導入など支配体制の整備を着々とおしすすめた。(問1)市町村制(1888年)と帝国憲法の公布(1889年)および帝国議会の開設(1890年)を画期に成立した明治憲法体制は,その選挙制度からみて,地主の利益を擁護するものであった。このように,地主勢力が政治の舞台に登場してくる背景には(問2)地主制の急速な発展があった。一方,非農業部門においても,帝国憲法発布を前後して,(問3)新しい動きがみられるようになり,産業革命の端緒がきずかれた

問1 下線部分を市町村会議員,衆議院議員,貴族院議員の選出方法と関連させて説明せよ。
問2 明治維新以降,地主制発展の契機となった政策を二つあげ,それがいかなる意味でそうなのか,説明せよ。
問3 非農業部門の「新しい動き」とは何か。また,それが「産業革命の端緒」と言われるのはなぜか,産業革命の概念とかかわらせて説明せよ。
(全体で400字以内)


【解答例】
1市町村会議員の選挙権は地租もしくは直接国税2円以上の納入者に限られ,地主ら地方名望家が市町村会の実権を握った。衆議院議員の選挙権は直接国税15円以上の納入者に限られ,貴族院議員にも多額納税者として大地主が各府県から1人選出された。
2地租改正で封建的領有制が否定されて地主の土地所有権が保証され,地主制発展の基礎となった。さらに定額金納制が導入され,物価変動が農民負担に直接影響を及ぼすようになったため,農民の階層分解を助長した。特に松方デフレ財政にともなって農産物価格が下落し,農村が深刻な不況に陥るとともに地租負担が実質的に増加したため,階層分解が進んで地主への土地集中が拡大し,地主制発展を促進した。
3産業革命とは,庶民衣料の生産部門を中心として機械制大工業が普及し,資本主義社会が成立する過程である。当時,綿紡績業で民間企業が勃興して大規模な機械紡績が普及したため,産業革命の端緒と言われる。
(総計400字)