過去問リストに戻る(大問ごと)(小問ごと)

年度 1994年

設問番号 第2問


次の史料はある条約の一部である。これを読んで以下の問いに答えよ。(400字以内)なお,史料は原文の旧字体を新字体に改め,濁点,句読点を補い,一部にふりがなを付けた。

第一款 朝鮮国ハ自主ノ邦ニシテ日本国ト平等ノ権ヲ保有セリ。嗣後両国和親ノ実ヲ表セント欲スルニハ彼此互ニ同等ノ礼儀ヲ以テ相接待シ,毫モ侵越猜嫌スル事アルベカラズ。先ヅ従前交情阻塞ノ患ヲ為セシ諸例規ヲ悉ク革除シ,務メ寛裕弘通ノ法ヲ開拡シ,以テ双方トモ安寧ヲ永遠ニ期スベシ。
注(1) 嗣後…その後,以後   (2) 毫も…毛ほども,少しも

問1 この条約の名称を記せ。
問2 この条約が締結されるのに直接的な契機となった外交上の事件の名称を記せ。また,その事件がなぜ直接的な契機となったかがわかるように,事件の概略を具体的に説明せよ。
問3 この条約によって,「朝鮮国」と「日本国」は「平等ノ権ヲ保有」するようになったとは言えなかった。その理由を具体的に説明せよ。
問4 「平等ノ権ヲ保有」することにはならなかったにもかかわらず,下線部のように書かれているのはなぜか。この時期の東アジア世界の国際秩序に留意して説明せよ。


【解答例】
1日朝修好条規。
2江華島事件。日本政府は,難航していた朝鮮との国交調整交渉を打開するため,1875年軍艦雲揚を派遣して朝鮮沿岸の測量を行なわせて朝鮮側を挑発し,江華島で軍事衝突事件を引き起こした。そして,この機会を利用して朝鮮政府との外交交渉の場を作り出し,翌年黒田清隆・井上馨を全権として朝鮮に派遣し,軍事的圧力のもとでこの条約を締結させた。
3この条約は,日本に対して領事裁判権や関税免除の特権を認めるという不平等条約であった。
4この時期の東アジア世界には清を宗主国とする冊封体制が形成され,朝鮮や琉球,ベトナムなどの周辺諸国は清との間に宗属関係を結び,その藩属国として位置づけられていた。ところが,日本はすでに日清修好条規で清と対等な国交関係を樹立しており,この条約で朝鮮が自主独立の国であること,日本と形式上平等な関係を結ぶことを規定することにより,清の朝鮮に対する宗主権を否定しようとした。
(総計397字)