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年度 1995年
設問番号 第1問
次の文章を読み,下記の問いに答えよ。(400字以内)
江戸時代にはいると,民衆教育が寺子屋を通じて都市・農村を問わず広範に普及したが,室町時代においても,寺院などで民衆の子弟への教育が行われ,(1)江戸時代一般に使われた民衆用教科書も,この頃すでに広く流布していた。これに比べ,(2)室町時代以前の民衆にとって教育を受ける機会は少なく,自らの意思を文章で表現することはほとんどなかった。
問1 江戸時代における寺子屋の教育について,藩校と対比させて,その内容を説明せよ。
問2 江戸時代の村の生活において識字・計算能力が重要な意味をもっていた理由を,農村支配のあり方との関係で説明せよ。
問3 下線部(1)にある「民衆用教科書」の実例をあげ,その内容を説明せよ。
問4 下線部(2)をふまえ,中世における農民の識字能力の発達について,具体例をあげて説明せよ。
【解答例】
1藩校は諸藩が民政を担う人材を育成するために設立した教育機関で,武士を対象とし,授業は朱子学など漢学が中心だった。一方,寺子屋は村役人や僧侶・神職などによって経営された教育機関で,庶民の子女を対象とし,授業では儒学教育も行われたが,読み・書き・そろばんが中心だった。
2江戸時代は村請制が採用され,村役人を中心とする自治が保証され,年貢・諸役も村ごとに賦課されて村全体でまとめて納入する仕組みとなっていた。そのため,領主からの諸法令の伝達や年貢・諸役の割り当てなどの業務を遂行する村役人クラスの上層農民には,識字・計算能力は不可欠であった。
3庭訓往来。手紙文の形式を使い,日常生活に密着した用語や知識を網羅したもの。
4鎌倉時代後期には,阿て河荘民言上状のように,名主らが領主に対して百姓申状を出すことがあった。室町時代には惣村の形成が進み,村掟の制定や年貢の百姓請などにより文書の作成・利用が広がった。
(総計400字)