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年度 1997年

設問番号 第1問


次の文章を読んで,下記の問いに答えよ。(400字以内)

 18世紀の中葉から後半にかけて,各地で人口が減少し,飢饉や百姓一揆が頻発するようになった。またこの時期には,各地に新しい産業の発展が見られたが,そのこともまた民衆の生活基盤を動揺させ,多くの貧しい人びとが都市や宿場町などに流入していった。1787(天明7)年の都市打ちこわしは,こうした情勢を背景としておこり,幕府に大きな衝撃を与えた。
 こうして,寛政改革においては,江戸の治安対策が重要な課題となって,(1)[    ]を収容する新しい施設が設けられたり,節約をはかって飢饉や災害にそなえ,自治的に運用する新しい制度がつくりだされたりした。また幕府は,生業をもたない貧しい人びとを農村に帰そうとしたが,それが容易に実現できるような状況にはなく,〔    〕集団や若者組などが地域の秩序を脅かしていた。そこで幕府は,地域の治安対策のために,1805(文化2)年,(2)関東取締出役を設け,その後も地域の治安確保のために努力した
 他方,近世後期には,天然痘その他の伝染病が広範な人びとを悩ませており,(3)多数の民衆が商売繁昌や病気治し・厄病よけなどの現世利益を求めて,多様な神仏への信仰が発展した。こうした信仰は民間信仰とか民俗信仰と呼ばれているが,黒住教,天理教,金光教などは,こうした信仰を背景として成立した新しい民衆宗教であったし,国学や水戸学にもこうした宗教現象へのつよい関心が見られる。

問1 [    ]にあたる言葉を用いながら,下線部(1)を具体的に説明せよ。
問2 下線部(2)の関東取締出役は,どのような人びとをどのようにして取り締まろうとする制度だったか,説明せよ。そのさい,〔    〕にあたる言葉を用い,また1827(文政10)年に設けられた制度とも関連づけてのべよ。
問3 下線部(3)にいう民間信仰・民俗信仰について,講,開帳,巡礼の3語を用いながら,その宗教活動の具体的な様相を説明せよ。


【解答例】
1幕府は石川島に人足寄場を設け,無宿や軽犯罪者を収容して職業訓練を施し,彼らに対する授産とともに治安の安定をはかった。さらに,江戸の町方に対し,町予算を節約させたうえで節約分の7割を積立させる七分金積立の制度を設けた。積立金は江戸町会所を設けて運用させ,貧窮者への低利融資を行うとともに,飢饉や災害に備えて米穀を蓄えさせた。
2関東では,江戸地廻り経済圏の成長にともなって無宿や博徒が横行したうえ,幕領・私領が入り組んでいたため,治安確保がはかりにくかった。そこで幕府は,関東取締出役を設けて幕領・私領の区別なく警察機能を担当させ,無宿や博徒を取り締まらせた。さらに,広域な村々をまとめて寄場組合村を編成させ,下部組織とした。
3民衆は娯楽的性格を強めつつも現世利益を求めて各地の寺社を訪れた。近隣の寺社がもよおす縁日や開帳に訪れ,遠方の寺社へ講を結んで交代で参詣したり,霊場への巡礼を行うなどした。
(総計398字)