年度 1997年
設問番号 第3問
次の文章は,1960年7月から64年11月まで首相を務めた池田勇人の秘書官の一人が書いた回顧録からの抜粋である。これを読んで,下記の問いに答えよ。(400字以内)
岸内閣の最重要課題である(1)安保条約改定は,日ましに悪化の情勢を示していた。当初のねらいであった日本の自主性の誇示などという姿はどこかへけしとんでしまい,国会の討議は,「もし戦争があったら」という仮定の論議から,「いまにも戦争がある」という恐怖の論議へうつりかわりつつあった。
(2)私は,当初,安保問題があれほど大きな騒ぎになるとは思ってもいなかった。……当初,保守党全体も,そこまで深刻には考えていなかっただろう。
(3)五月十九日……以後,反米・反安保の空気が一変して,反岸となった。私は,これまで安保の討論については,かならずしも社会党に同調しないものまでが,反岸というかたちになっていくのを肌で感じた。
安保騒動で暗くなった人心を……明るくきりかえてしまう,(4)これがチェンジ・オヴ・ペースであり,本当の人心一新だ。新総裁,新政策である。池田は,満々たる自信と,俺以外にはないという使命感にあふれていた。(伊藤昌哉『池田勇人その生と死』より)
問1 下線部(1)に「安保条約改定」とあるが,岸内閣はこの改定において旧条約のいかなる点を改定しようとめざしたか,文中の「日本の自主性」という語句に留意しつつ,二つ指摘せよ。
問2 下線部(2)で筆者は「安保問題があれほど大きな騒ぎになるとは思ってもいなかった」と言っているが,条約改定問題が筆者や「保守党」の予測を裏切って「大きな騒ぎ」になったのはなぜか,新条約の中身にふれて簡潔に答えよ。
問3 下線部(3)で「反米・反安保の空気が一変し」とあるが,この時以後運動はどのように「一変」したのか,またその原因は何であったか。「反米・反安保」「反岸」の内容にふれつつ説明せよ。
問4 下線部(4)にある「チェンジ・オヴ・ペース」として,池田内閣は岸内閣時代の政治を大きく転換した。その転換の中身を二つ記せ。