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年度 1998年

設問番号 第1問


次の文章を読んで,下記の問いに答えよ。(400字以内)

 近世社会は,異なった諸身分に属する人々から構成される身分制社会であった。基幹となる諸身分は(1)士農工商と称され,また(2)都市に住む商人・職人は町人と呼ばれていた。近世の身分制度は,統一政権が,人々に身分に応じた固有の役を賦課することによって形成された。また,これらの諸身分は,武士の主従制,(3)百姓の村,職人の仲間,町人の町など,各身分ごとに集団を形成しており,権力は,それらの集団を通して彼らを掌握していた。

問1 下線部(1)に関連して,武士・百姓両身分のあり方は,中世後期と近世でどのように異なっていたか説明せよ。また,その変化の過程で,太閤検地が果たした役割についても述べよ。
問2 下線部(2)が,幕藩領主から課された負担の内容について説明せよ。
問3 下線部(3)においては,百姓たちが自らの労働・生産をどのように共同して支えあっていたか,具体例を二つあげて,それぞれの内容を説明せよ。


【解答例】
1中世後期,国人など武士の多くは在地領主として村落を支配して農業経営にも従事し,また百姓は惣村を母胎に一揆を形成して武装し,なかには武士身分を獲得して地侍となる者もいた。このような武士・百姓両身分が未分化の状態は土地への重層的な権利関係を否定した太閤検地により解消され,近世では兵農分離が進んだ。武士は石高制にもとづいて知行を与えられ,直接的な農業経営から切り離されて城下町居住を義務づけられると共に,統治者として支配身分に位置づけられて役人的性格を強める一方,百姓は一地一作人の原則により田畑・屋敷地の所持を保障されると共に,年貢・諸役の納入を義務づけられた被支配身分となった。
2商人・職人の負担は,土木作業を担う町人足役,営業税を意味する運上・冥加,宅地に賦課された地子などで,地子がしばしば免除されるなど,比較的軽微だった。
3入会地・用水の共同管理。結と呼ばれる田植・稲刈りなどの際の共同作業。
(総計400字)