年度 2024年

設問番号 第4問


近代の土地制度は1870年代と1930~1940年代とに大きく変化した。1870年代前半には農地売買が自由化され,農地を担保に借り入れた資金を返せない際に,土地所有権を移転することも容易になった。貸し主にとっては安全に貸せるようになり,借り主にとっては農地を担保として資金を借り入れやすくなった。一方,1930年代後半から1940年代前半には,農地改革に先立ち,地主の権利への規制が強められた。これらに関する以下の資料と図とを読んで,下記の設問A・Bに答えよ。解答は,解答用紙(二)の欄に,設問ごとに改行し,設問の記号を付して記入せよ。

資料1 1873年1月地所質入書入規則(大意)
・所有地を担保として金銭を借り入れ,かつ,その所有地を引き続き耕作し,その収益から借入金の利息を貸し主に支払うことを書入〔かきいれ〕という。
・書入した土地は借り主が耕作しているので,その土地の地租および地方税は借り主が納付する。
・借入金を返済せずに,書入した土地を借り主から貸し主に引き渡すときには,貸し主が新しい地券の発行を申請し,以後,地租と地方税を納付する。

図1 小作地と自作地の比率(古島敏雄編『日本地主制史研究』)
小作地と自作地の比率

資料2 1938年4月農地調整法(大意)
地主は,事情もなく小作料を滞納するなど小作農側に信義に反する行為がない限り,小作契約を解約したり小作契約の更新を拒否したりすることはできない。

資料3 1941年11月農林次官通牒(大意)
米の政府買上〔かいあげ〕価格の引き上げや,自作農と小作農への生産奨励金の交付により,米の生産が有利になるため,農業経験の乏しい地主が小作契約を解約して自作しようとするなどの恐れもある。そのような行為は食料増産のためにあってはならず,また農地調整法に照らしても認められないので,特に適切な措置を講じる。

図2 地主と小作農の間の収益配分の変化(米の政府買上価格引き上げと生産奨励金交付の効果,概算)(『岩波講座日本経済の歴史5』)
地主と小作農の間の収益配分の変化

設問
A 小作地の比率は図1のように変化した。その要因を3行以内で述べよ。

B 図2に見られる収益配分の変化はどのような政策的意図によってもたらされたか。3行以内で述べよ。


解法のヒント