筑波大学 個別学力検査等試験問題【前期日程】(日本史B)
年度 2001年度(平成13年度) 設問番号 第3問
テーマ 江戸時代における幕府と洋学/近世
江戸時代における幕府と洋学の関係について,下記の史料の下線部(1)・(2)を説明しながら論述せよ。400字以内で解答せよ。
史料1
寛政四五のころより紅毛の書を集む。蛮国は理にくはし。天文地理又は兵器あるは内外科の治療,ことに益も少なからず。(1)されどもあるは好奇之媒(なかだち)となり,またはあしき事などいひ出す。さらば禁ずべしとすれど,禁ずれば猶やむべからず。況(いわん)やまた益もあり。さらばその書籍など,心なきものゝ手には多く渡り侍らぬやうにはすべきなり。
(松平定信『宇下人言』,岩波文庫による)
史料2
今時(きんじ),世間に蘭学といふこと専ら行はれ,志を立つる人は篤く学び,無識(むしき)なる者は漫(みだ)りにこれを誇張す。その初めを顧(かえり)み思ふに,昔,翁(おう)が輩(ともがら)二三人,ふとこの業(わざ)に志を興(おこ)せしことなるが,はや五十年に近し。今頃かくまでに至るべしとはつゆ思はざりしに,不思議にも盛んになりしことなり。(中略)然(しか)るにかく成り行きしはいかにと思ふに,それ医家のことはその教へかた(2)すべて実(じつ)に就くを以て先とすることゆゑ,却(かえ)って領会(りょうかい)すること速かなるか,または事の新奇にして異方妙術もあることのやうに世人(せじん)も覚え居ることゆゑ,奸猾(かんかつ)の徒,これを名として,名を釣り利を射るために流布するものなるか。
(杉田玄白『蘭学事始』,岩波文庫による)
(注) 領会(りょうかい):よく理解すること。また,理解して承認すること。
奸猾(かんかつ):わるがしこいこと。ずるがしこいこと。また,そのような人。