過去問リストに戻る

筑波大学 個別学力検査等試験問題【前期日程】(日本史B)

年度 2010年度(平成22年度)  設問番号 第3問

テーマ 江戸前期の社会の文化的特徴


江戸時代前半期における社会の文化的特徴を,次の(ア)〜(エ)の語句を用いて論述せよ。解答文中,これらの語句には下線を付せ。ただし,語句使用の順序は自由とする。

(ア)坂田藤十郎  (イ)『曾根崎心中』  (ウ)天下の台所 (エ)尾形光琳


【解答例】
幕藩体制は17世紀後半には安定期を迎えた。武士に礼儀による秩序が求められる一方,東・西廻り航路が整備されて全国的な流通網が整い,大坂が諸国物資の集散地として天下の台所と称されるなど,経済活動が活発となった。村々では,小家族とせまい耕地とによる小農経営が広く成立し,都市に集住する武士らの需要に対応しながら,労働集約型の農業が発展した。こうしたなか,宗教的・道徳的な要素を排した実証的な古典研究,実用的な学問が広がる一方,現実を「憂世」ではなく「浮世」として肯定し,世俗の人間や生活に価値をおいた町人文芸がさかんになった。小説では井原西鶴が浮世草子を著し,演劇では竹本義太夫が人形浄瑠璃を大成させ,歌舞伎では坂田藤十郎が活躍するとともに,近松門左衛門が『曾根崎心中』などの脚本を書いた。さらに,高度な技術をもつ手工業の発達した京都では,尾形光琳らが洗練された美術工芸品をつくり,町人らの需要に応えた。