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筑波大学 個別学力検査等試験問題【前期日程】(日本史B)

年度 2015年度(平成27年度)  設問番号 第3問

テーマ 江戸初期〜正徳政治期の日朝関係


次の史料は,新井白石の『折たく柴の記』中の記述である。下線部①から③の語を説明しながら,慶長十二年(1607)の朝鮮使節の来訪から,同書に下記の内容が記されるまでの近世の日朝関係の推移と,白石によってこのような変更がなされた理由について論述せよ。

これは,両国の好〔よしみ〕修められし初よりして,彼国の書には,日本国王としるしまゐらす。これは鎌倉京の代々より,外国の人は,我国天子の御事をば,日本天皇と申し,武家の御事をば,日本国王と申せし例によれる也。しかるを,①寛永の比〔ころ〕に至て,②日本国大君としるしまゐらすべき由を仰つかはされしより,此事そののちの例とはなりたり。(略)されど,大君といふは,彼国にして,その臣子を授くる所の職号にこそあれ。其号を以て称じ申すべき由を仰つかはされしは,彼国の官職をうけ給ふの嫌〔きらい〕ありて,また大君は,天子の異称なる由,異朝の書にはみえたり。さらばまた我朝天子の御事にも疑あれば,たゞもとのごとくに日本国王としるしまゐらすべき事を申すべき由,③対馬守に仰下されぬ。

(岩波文庫による。一部の表記等を改めている。)