筑波大学 個別学力検査等試験問題【前期日程】(日本史B)
年度 1991年度(平成3年度) 設問番号 第3問
テーマ 文明開化/近代
次の史料は『牛店雑談 安愚楽楽』の一節である。史料を読み,下記の設問に解答せよ。(400字以内)
天地は万物の父母,人は万物の霊,故ゆゑに五穀草木鳥獣魚肉,是が食となるは自然の理にして,これを食ふこと人の世なり。昔々の里諺に(中略),あら玉うさぎも吸物で,味をしめこの喰初に,そろそろ開化し西洋料理。その功能も深見草,牡丹紅葉の季をきらはず。猪よりさきへだらだら歩行,よし遅くとも怠らず,往来絶さる浅草通行,御蔵前に定舗の,名も高旗の牛肉鍋,十人よれば十種の注文,昨晩もてたる味噌を挙,たれをきかせる朝帰り,生のかはりの粋がり連中,西洋書生,漢学者流,劉訓に似た儒者あれば,肖柏めかす僧もあり,士農工商,老若男女,賢愚貧福おしなべて,牛鍋食はねば開化不進奴と,鳥なき郷の蝙蝠傘,鳶合羽の翅をひろげて,遠からん者は人力車,近くは銭湯帰,薬喰,牛乳,乾酪洋名チース,乳油洋名バタ,牛陽はことに勇潔,彼肉陣の兵粮と,土産に買ふも最多き,人の出入の賑はしく,込合の節前後御用捨,御懐中物御用心,銚子のおかはり,お会計,お帰ンなさい入らッしゃい。実に流行は昼夜を捨ず繁昌斯の如くになん。
〔設問〕
イ.史料の著者名を記せ。
ロ.下線の部分を説明し,その歴史的背景について論述せよ。