> 江戸時代、商品経済の進展により農民の階層分化が起こり、
> 本百姓体制が動揺したことについてですが、没落した本百
> 姓の土地に対する税の徴収はどのようにおこなわれたので
> しょうか? 新しい土地所有者から徴収すれば、幕藩領主
> の税収が減ることはなく、財政的な問題はないように思う
> のですが、どこに問題点があったのか教えてください。な
> ぜ階層分化が進展するとまずかったのでしょうか?
税の徴収は村請制という形をとっていましたから、百姓個人が没落しようが関係なく、村に対して村高に応じた税を賦課し、村の責任で納入させていました。ですから、多少の百姓が没落なら大した問題ではなかったとも言えます。
しかし問題が2つほどあります。
一つは、階層分化が進んだり、村人の土地が村外のものへと移っていったりすると、村を単位とする支配のあり方が難しくなります。
階層分化が進み、土地を集積した地主・豪農と土地を手放して小作人に転落した貧農たちとの対立が生じるようになると、村の共同体(お互いの助け合いの集団)としてのあり方が維持しにくくなります。もともと村は、百姓たちの共同体であることによって初めて百姓支配のための行政機構として役立っていましたから、共同体秩序が崩れていけば行政機構としても機能しにくくなります。幕府・大名にしてみれば、個々の百姓を直接把握しているわけではなく、村を通して初めて把握しているだけのことですから、村が行政機構として機能しにくくなるという事態は、秩序維持には不都合です。
また、先ほども確認したように、村は百姓たちの共同体であることによって行政機構として役立っていたのですから、村内の土地が村外のものへと移っていくことは、その基本的なあり方を崩すことになります。
ですから、幕府や大名にとっては、階層分化はできる限り、抑制したい事態なのです。
二つめですが、飢饉が発生して百姓の生活が厳しくなると(共同体としてのあり方が崩れていればより被害はひどくなる)、餓死するもの、村を離れて都市へと流浪するものが増え、人口が減少します。こういう形の百姓の没落は、農業に従事する労働力が減少しますから、農業生産そのものにとって打撃です。
ですから、飢饉が発生しても被害を最小限に食い止めることができるような状況をつくっておきたいものです。となれば、個々の百姓経営の成り立ちを安定させておく必要があるし、村の共同体としてのあり方を再建しておく必要がある。だから、階層分化はできる限り、抑制しておきたいのです。
[2005.1.30]