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座と為替について

メールでの質問への応答です(2000.9.27)。

> 室町時代の座や為替(字あってるかな?)
> などの経済の仕組みがつかめないんです。

まず座について。
座は中世における商工業者の同業者団体のことで,平安時代末期に成立し,戦国〜織豊政権期に廃止されます。
もともと座とは,寺社や貴族・官衙(本所と称される)に仕え,さまざまな雑役に従事した人びと(寄人と称される)が,寺社や貴族・官衙からさまざまな商工業上の特権を与えられたことに始まっています。
たとえば,大山崎の油座の人びとは離宮八幡宮に所属して本社の石清水八幡宮に奉仕する一方で,石清水八幡宮の権威のもとで各地での荏胡麻購入・灯油販売の独占権を保障されていた(なぜそんな特権を保障できるのかは石清水八幡宮の性格を念頭において考えてみよう!)。

ちなみに,当時の貴族は“家”を構成していましたが,その“家”というのは今とは違ってひとつの事業体(企業)のようなもので,政所・公文所といった機関(家政機関という)が置かれて運営されていました。だから,寺社や官衙と同じように,貴族の“家”に所属して雑事に従事する人びともたくさんいたわけです。
なお,鎌倉後期から室町期にかけて商品経済が発展するなかで,本所と座の関係がしだいに経済的な関係に変化していきます。つまり,人格的な隷属関係が希薄になり,営業税を収める代わりに特権を得るという関係に変化していくわけです。

次に為替についてです。
今でも,たとえばセンター試験などの受験料を支払うとき,大学入試センターや大学へ現金を郵送するのではなく,銀行や郵便局に現金を持ち込んで支払っていますが,このように現金を用いずに遠隔地間の代金決済や送金を行うシステムのことを為替といいます。
その仕組みはというと....
中世では,為替をおこなう業者を割符屋(替銭屋)といいますが,遠くにいる相手に代金を送金しようとする場合
(1) 割符屋に現金をもちこんで手形(割符)をもらう。
(2) 相手にその手形(割符)を送る
(3) 手形(割符)を受け取った相手は最寄りの割符屋に手形を持ち込み,手形に記された金額の銭を入手する。
こういう手順をとります。
なお,なぜ別の割符屋で手形(割符)の換金ができるのかといえば,それは割符屋どうしのネットワークが形成されていたからです(問丸が割符屋を兼ねることもあったようです)。割符屋どうしのネットワークのなかで相互の決済が行われていたため,手形を受け取った相手がもともと手形を発行した割符屋とは別の割符屋でも手形の換金ができたのです。

ちなみに,こうした経済の仕組みについては,『新詳日本史図説』(浜島書店)のような図説を参照すると少しはイメージがつかめると思うので,持っていなければ本屋で買ってきて,教科書を読んだり,問題集をやったりする際に必ず一緒に見ておいてください。