過去問リストに戻る(大問ごと)(小問ごと)

年度 2019年

設問番号 第3問


 次の資料は,1946年1月1日に天皇が発表した詔書である(一部の表記を改めている)。これを読んで下記の問いに答えなさい。(問1から問3まですべてで400字以内)

茲〔ここ〕ニ新年ヲ迎フ。顧ミレバ明治天皇明治ノ初国是トシテ五箇条ノ御誓文ヲ下シ給ヘリ。曰ク,
 一,⒜広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ
 一,上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ
 一,官武一途庶民ニ至ル迄各其ノ志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメンコトヲ要ス
 一,旧来ノ陋習〔ろうしゅう〕ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
 一,智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
 叡旨〔えいし〕公明正大,又何ヲカ加ヘン。朕ハ茲ニ誓ヲ新ニシテ国運ヲ開カント欲ス。須〔すべか〕ラク此ノ御趣旨ニ則リ,旧来ノ陋習ヲ去リ,民意ヲ暢達〔ちょうたつ〕シ,官民挙ゲテ平和主義ニ徹シ,敎養豊カニ文化ヲ築キ,以テ民生ノ向上ヲ図リ,新日本ヲ建設スベシ。(中略)

 然レドモ朕ハ爾等〔なんじら〕国民ト共ニ在リ,常ニ利害ヲ同ジウシ休戚〔きゅうせき〕ヲ分タント欲ス。⒝朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯〔ちゅうたい〕ハ,終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ,単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神〔あきつみかみ〕トシ,且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ,延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル觀念ニ基クモノニモ非ズ。(後略)
(注) 休戚:喜びと悲しみ。

問1 下線部⒜の方針にもかかわらず,その後創設された議会制度は,国民の政治参加や衆議院の権限を限定的にしか認めなかった。それはどのような限定であったのか,またそうした限定を取り払うために,第二次大戦後に議会制度がどのように変革されたのかについて説明しなさい。

問2 この詔書の発表に先立って実施された「人権指令」と呼ばれるGHQの施策について,当時の日本政府の対応も含めて説明しなさい。

問3 下線部⒝の中で,なぜ「架空ナル観念」を否定しているのか。その理由について簡潔に説明しなさい。


解答例をみる