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年度 2003年

設問番号 第1問


次の史料を読んで,下記の問いに答えなさい(史料は一部改変したり省略したところがある)。

 村居すること四十年,常に種植を試みるを以て楽となし,其の心を用ふるや尚し。其の述を執るや熟めり。且つ畿内及び諸州に遊観し,旁く爰に老農に詢ひ謀り,中華の農書を考へ,本邦の土宜を験し,将に書を著はして農を論せんとす。(中略)a此書の本邦に於けるや,古来絶えて無くして初めて有る者也。若し後に継て作る者あらば,当に此れを以て本邦農書の権輿となすべし。(貝原益軒筆「叙」)

 農人ハつねにbを見て,土用八専,其外節気のかハりを考へ,風雨等の変あらんことを心にかくべし。(中略)天気の考へを疎かにしぬれば,一時の風雨により,数月の苦労を忽に空しくすること間多し。かならず由断すべからず。(巻之一)

 [ c ]ハ,古ハ唐にもなかりしを,近古,宋朝の時分,南蛮より種子を取来りて後,もろこしにひろまり,本朝にも百年以前其たねを伝へ来りて,今普く広まれり。南北東西いづれの地にも宜しからずと云事なし。其中に付て,河内,和泉,摂津,播磨,備後,凡土地肥饒なる所,是をうへて,甚利潤あり。故に五穀をさしをきても,是を多く作る所あり。(巻六) 権輿とは「物事の始め」の意味。叙とは「序」と同じ。間とは「しばしば」の意味。由 断は「油断」と同じ。

1 上の史料は,すべて下線部a「此書」から引用したものである。日本初の刊行農書である,この書物の名前と中心的な執筆者の名前を一人挙げなさい。また近世社会において農書が果たした役割を述べなさい。
2 傍線部bに関連して,当時使われていた暦の名前と,その暦の作成に関わった人物の名前を挙げなさい。また改暦の背景について説明しなさい。
3 [ c ]は上記の地域の他,三河・伊勢・尾張等でもさかんに生産された。[ c ]に入る適当な作物の名前を書きなさい。また当代における[ c ]の栽培・生産の特質を述べなさい。
4 [ c ]が当時の人々の生活にどのような変化をもたらしたのか,述べなさい。


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