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山川出版社『詳説日本史』(チェック版:日B519)
       −旧課程の赤版(日史039)との内容比較−

古代

 記述が大きく変わったといえるのは平安時代についてであり、律令制解体期の描き方である。とりわけ、天皇を中心とする宮廷社会、富豪の輩に代表される地域勢力、王朝どうしの国交に限定されない国際交流−これらの点に注目したい。

中世

 中世はそれほど大きな変更はないが、鎌倉〜室町時代の公家・武家関係を意識した形式・記述となったこと、中世の北海道に関する記述が大幅に増えたことが注目される。

近世(その1)

 記述が大幅に変更された。とりわけ身分秩序に関する記述が根本的に変更された。そして、武士の主従関係の変化、幕府と朝廷との関係・その変化を意識した記述が大幅に追加されている。また、武家政権と宗教勢力との関係についても、宗教勢力の世俗権力としてのあり方を意識した記述になっている。
 ただ、歴史学界での研究成果を記述のなかに盛り込むときに教育的配慮がどの程度払われたのか、非常に気になるところだ。

近世(その2)

 都市・農村の構造変化とそれに対する幕府の政策(とりわけ都市政策)に構成上の力点がおかれている。さらに構造変化のなかでの商品生産・賃金労働を“資本主義の胎動”と位置づけ、それを取りこむことで藩権力を強化することに成功した諸藩が雄藩として幕末の政局において大きな役割を演じると描きだし、近代への展望をみようとしている。そうした構成上の変化が大きな変更点といえる。そして、列強の接近のところで“鎖国”という表記が注意深く避けられている点にも注目される。
 なお、記述がより詳しくなっているものの、その代わりに削られた記述もある。享保の改革での大坂堂島の米市場の公認や田沼政治のもとでの俵物の輸出奨励などである。両者ともに、堂島の米市場、俵物の輸出というデータは別の箇所で触れられているものの、幕政との関連づけが消えてしまっている。また、記述が削られたり、または詳しくなったことによって、かえって文意が理解しにくくなった箇所もある。

近代(その1)

 幕末・明治期については、データが詳しくなったが、内容のうえで大きく変更された点はない。それでも、幕末の政治動向を単なる政権抗争としてではなく社会動向との関連で描こうとしている点、赤報隊の偽官軍事件が記述されたこと、議会の予算審議権に関して政府の同意なくして削減できない事項が存在していたことを明記した点、経済に関する記述が1か所にまとめられたこと、などには注目したい。

近代(その2)

 昭和戦前期の構成が年代順を意識した構成に変更になったため、赤版よりは理解しやすくなったと思う。
 データが詳しくなったが、追加された記述として特徴的なものは、“軍部 vs それ以外の政治勢力”という図式をクローズアップさせる記述(第一次護憲運動・日独防共協定・南進論の高まり)、大正デモクラシーの規定が一般的なものに変更になったこと、田中義一内閣の対英米協調姿勢がはじめて明記されたことなどである。